「テレビを見るときは 部屋を明るくして 画面に近づきすぎないようにしてください」
出典元、アニメを見る時に表示されるテロップ。「ポケモンショック」に依る。
「ポケットモンスター」、「ポリゴン」、当時を知る人にはこの単語だけで伝わる出来事だろう。アニメ「ポケットモンスター」第38話、「でんのうせんしポリゴン」の回に起こった、全国規模での事件である。アニメーションにおける「パカパカ」と呼ばれる明滅の演出を多用した事により、「ポケットモンスター」が大好きで、テレビにかじり付く様にして見ていた多数の子どもたちが体調不良を訴えて病院に運ばれた。大事件であると共に、やろうと思って出来るならとんでもなく高度で広範囲な攻撃だ、と思わせる衝撃的な事件だった。実際にはこのテロップにある様に、あまりにも熱中し、画面に近付き過ぎ、さらには部屋が暗い場合に、子どもに特に影響がある、というかなり絞られた条件で発症してしまうらしい。しかし当時のポケモンブーム、全国規模で考えればそれだけ多くの子どもたちが熱中して見ていたアニメが「ポケットモンスター」だった、という事だろう。この事件の影響で以後、書き方や表示ルールに違いはあれど、ほとんどのアニメにこのテロップが付けられる事となった。
「テレビを見るときは 部屋を明るくして 画面に近づきすぎないようにしてください」
そしてもちろん他のアニメでも「パカパカ」の演出は使わない様にされ、過去に作られたアニメの再放送でも調整されるなど、アニメ業界に大きな影響を与えた事件である。しかし特筆すべきは、こんな事件を起こしたアニメが終わらなかった点である。現在放送されているアニメ「ポケットモンスター」は、サブタイトルを変えつつ続いて来た、この事件のあった初代「ポケットモンスター」から綿々と続いている作品である。間は正にこの「ポケモンショック」の時しか開いていない。主人公サトシの冒険は1997年から23年間、ずっと続いている。恐るべき作品である。
もちろん「ポケモンショック」により放送は一時期中断された。そして被害者への謝罪、原因の究明などがあった。しかしそこで、普通、こういった事件を起こしたアニメ番組は終わるものである。しかし終わらなかった。なぜかというとそれは、正に被害者こそが一番のファンであり、継続を望んだ声が多数届いたからである。この展開もなかなかないものである。そして改善策が整い、アニメはテロップと共に再開された。同時に他のアニメにも表示される事となる。「ポケモンショック」はアニメ業界における大事件であったが、伝説であったとも言える。
「ポケモン」は元々はゲームなので、続編が次々と作られる。まあ粗製濫造でないのが任天堂製たるゆえんだが、金・銀、ダイヤモンド&パール、などゲームに準拠した形でアニメも制作され、主人公のサトシは固定のまま、ヒロインや舞台を入れ換える方式でずーっと続いているアニメである。毎年劇場アニメも制作され、ゲームとの連動企画もあり人気も高い。これだけ長く続くシリーズに育つとは、初めの頃誰が考えただろうか。そして今や「ポケモン」はブームから、一時期の人気ではない、”いつもそこにある文化”へと進化して、定着してしまったのである。今でもゲームの新作は当たり前の様にゲーム年間売上上位を独占し、サトシはヒロインをとっかえひっかえ永遠の10歳として世界中を旅している。全くもって、大した作品である。