「ラストオーダーになります」
出典元、日本全国の飲食店、店員のセリフより。
「ラストオーダー」という言葉がこれほど当たり前に使われる様になったのはいつ頃からだろうか。今ではレストランでも、居酒屋でも喫茶店でも普通に使われている。まず思うのは、そんなに分かりやすい言葉じゃないぞ、である。「それ、どういう意味?」と聞き返す客もいるのではないか。しかし、聞き返す客が減って来たからこそ、市民権を得て当たり前の様に使われる言葉になったのだろう。
念のため説明しておくが、「閉店前に受け付ける最後の注文」という意味である。だいたいは閉店30分前ほどに設定されている。食べ放題なども同様で、制限時間に油断していた客がラストオーダーにどかんと注文するなど、よくある光景である。ちなみに店員からの「閉店も近いんだからな?」の意味も込められているので、ラストオーダーの量はちゃんと閉店時間を意識してするように。店員は閉店した後に後片付けや掃除をして、やっと帰れるのである。お店に迷惑を掛けない様にするのがマナーであり、多少店員に気を遣ってあげるのも優しさである。
それで、「ラスト」も「オーダー」も英語なので分からなさそうなものだが、よく考えるとどちらも中学英語なので、少し考えれば分かってしまうところがこの言葉のミソか。「最後……注文ね。ああ」という。確かに店員にしても、「お客様、閉店前に受け付けられる最後の注文となります」より、「お客様、ラストオーダーになります」の方が簡単でいい。それぐらい分かれ、という話だ。まあ別に英語に敵意を持つ必要は無いので伝わればいいのである。
ところで、変な事を言うが、「ラストオーダー」というこのフレーズ自体が少し格好いい。何と言ったらいいか、「ファイナルアンサー」に通じるものがあるというか。造りが似ているからか。あと「オーダー」は「注文」という意味だが、別に料理の注文に限った話ではない。サービスの注文、仕事の注文、調査の注文、なんだか漫画かドラマにありそうである。いつも無茶な依頼をして来る戦友が最終局面で、「これが俺からの、ラストオーダーだ……!」とか言いながら死にゆく展開とかありそうである、というか既にあるかもしれない。つまり無駄に格好いい。しかし頭をふと「お店のラストオーダーと同じだな」の連想が通り過ぎた場合、その人だけは軽くシュールな気持ちになる。なかなか狙って出来るものではない、言葉のマジックである。