「世界を挑発する最高傑作」
出典元、鈴木光司の小説「ループ」の、新書版の帯に書かれているキャッチコピー。これを考えた人は、よくやったもんだと思う。
鈴木光司の小説「リング」は、日本にホラーブームを巻き起こすほどの名作だった。それ以降、似た様な小説もたくさん出たし、「リング」の映画化は何度もされるほど人気があり、爆発的なヒットを飛ばした。テレビドラマも放送されたし映画の続編も出た。さらに「呪いのビデオ」までレンタルされてた様な気がするし、とにかく日本全国「リング」と「貞子」一色だった。
そして続編の「らせん」である。小説として、「リング」から地続きで繋がるストーリー、ながらもストーリーのジャンルを変えるという驚きの手法を用い、「らせん」は「リング」での殺人ウィルスを科学的に解明していくという、「リング」の続編として見劣りしない、すごい作品だった。こちらもドラマ化や、「リング」とセットでの映画化を果たしている。「リング」が名作なら「らせん」は名続編である。あれをよくこう続けた。
そして3部作完結編、「ループ」である。ここでずっこける。なんと言うか、「リング」、「らせん」からさらにまたジャンルを超越し、まあSFなのだが、またなにか別のものになってしまったのである。あと叙述トリックを使っているのでオチが終盤に圧縮されている。オチという言い方も失礼だが……、この作品と、「リング」シリーズを締めくくる肝の情報が最後の最後に出て来るので、逆に言うと序盤から中盤にかけて前2作に比べて淡々としている。まあ状況は深刻ではあるのだが、「リング」や「らせん」の様な死に追われる恐怖や次々と判明する真実、といったものもない。あえて言うならだらだらっとした展開である。あと貞子も出て来ない。テレビから。
いや原作小説的に言えば、「リング」でも貞子はテレビから出て来はしないのだが、とにかくずっこけたのは映像関係者である。「リング」と「らせん」の続編で、完結編と言えば大ヒットは確実だ、こんなもの映像化しない方が間違っている。あわよくば3連作でもう一度……、と、思い、読んだ人たちがドミノ倒しにずっこけた。こ、これは映像化出来ない……。まあ単純に、全体としてだらだらとし過ぎ、そしてオチで「リング」、「らせん」ともどもちゃぶ台返しがあるのである。直接のネタバレは書かないが、まあ強いて言うなら「夢オチ」が最も近いかなっ。
「世界を挑発する最高傑作」
たぶん映像関係者を挑発する作品だったんだと思う。架空の会話を用いるなら、作者からの「映像化出来るものならしてみろ!」、映像関係者からの「出来ねえよ!」といったところか。あともうひと言、映像関係者から「お前、前2作が映像化してヒットしたの分かってんのになんでこんな3作目書いてんだよ!」、かな。作者も悪いが止められなかった編集者も悪いと思う。
「ループ」、小説としては行くところまで行ってしまった感じに締められてしまったが、受け手の感想としては”やり過ぎ”、もしくは”やり切りやがった”である。そもそも「リング」のヒットからして、小説の地力もあるが貞子のホラー的怖さが映像的に受けたのも大きかったのである。「らせん」も切り口を変えたとはいえ貞子はちゃんと出て来るので、「リング」よりちゃんと出て来るので、映像化も料理のしがいがある。しかし「ループ」はちゃぶ台返しである。「あああああ~」とガックリした映像関係者の声が聞こえて来る様なトリッキーなオチであった。「リングシリーズはらせんまででいいよ」との声も聞かれるゆえんである。
ウィキペディアに非常によくまとまった一文があるので引用したい。まあ、こういう事なのだろう。
また、第1作『リング』の怖さの現状維持を望んだ観客、それに呼応して恐怖映画のジャンルにこだわった映画会社の思惑等々の事情により、数多く映像化された『リングシリーズ』の中では、未だに映像化されるに至っていない。
たぶん伝わってないので気になる人は読んでみる事をお勧めしますん。