「100年に1度の出来とされた03年を超す21世紀最高の出来栄え」
出典元、ワイン、ボジョレー・ヌーボーの2011年のキャッチコピー。販売業者らの評価、という事になっているらしい。同じ年でも諸説ある、というか何種類かある。
ワインと言えば飲んでいる人と飲んでいない人とで、味の違いが分かるか分からないか非常に差の出るお酒である。サイゼリヤの格安ワインで満足する人もいれば、高級ワインにこだわりを持つ人もいる。しかしながら、結局のところ”アルコールの入ったぶどうジュース”の域からは出ないので、その味の違いは僅差となるのだろう。ソースはテレビ番組「芸能人格付けチェック」。数々の高級ワインを飲んで来たであろう芸能人たちが、格安ワインと高級ワインの味の違いをことごとく外していくさまは見応えがある。
ワインはそもそも寝かせてから飲むお酒であるが、ボジョレー・ヌーボーに関しては毎年解禁日がある事からも分かる様に、その年に作られたものを出している。元々はその年の出来栄えをチェックする目的でワイン業者向けに品評していた様だが、話題性がありこれを売るのもいいと誰かが思い付いたのだろう。現在の様に解禁日、キャッチコピーを添えて、のお祭り騒ぎになった。フランスと日本では騒がれている様だが、他の国での事情は知らない。商売っ気を出した人が上手くやったのだろうが、やっている事は恵方巻きに近い。
さて、恵方巻き共々コンビニまで便乗して祭りにしてしまったボジョレー・ヌーボーだが、キャッチコピー問題というものがある。いや別に問題などではなく実際のところは笑い話なのだが、毎年付けるそのキャッチコピーが”大げさ”過ぎるのである。毎年付けるのに大げさとなると、つまり表現のインフレが留まるところを知らない。
1996年、
「10年に1度の逸品」
なんて付けてしまったら、過去10年の中では少なくとも最高の味でなければおかしい事になる。しかし翌1997年、
「まろやかで濃厚。近年まれにみるワインの出来で過去10年間でトップクラス」
と来たもんだ。そうですか、じゃあまた更新されたのかな、2001年、
「ここ10年で最もいい出来栄え」
んん? 好きだな10年の言葉が。とにかくひたすら美味しくなっている様で良かった良かった、しかし2003年、
「110年ぶりの当たり年」
っておい! 一世紀最高値出ちゃいましたー。……しかしそこは100年ぶりでいいんじゃないか、どんだけインフレしてるんだ。次の年どうするんだ。とにかく他の年と比べたがるキャッチコピーだな。そして……、2011年のキャッチコピーがこれである。
「100年に1度の出来とされた03年を超す21世紀最高の出来栄え」
いや110年ぶりって言ってたけどな!
そしてそんなつっこみどころ満載のキャッチコピーが話題を集め、普段ワインを飲まない様な人にも「せっかくだし飲んでみようかな」需要が生まれ、コンビニにも並ぶほどになった。そもそも古く寝かせた方が高値が付きやすいワインなのに、作ってすぐの中での格付けである。普段ワインを飲まない人ほど、味の違いは分からない。サイゼリヤの格安ワインと比べると、3倍ほどの値段なのは確かであるが、3倍美味しいかは誰も保証していない。
まったく、狙ってやっていたのなら大した戦略である。