「味の素」
出典元、味の素株式会社の販売するうま味成分調味料の名称。お馴染みのアレ。
味(あじ)の、素(もと)だと……!
既に日本人の耳に定着してしまっていて、固有名詞の「アジノモト」として違和感がなくなっているが、よく考えるととんでもない名前である。主語が大きい。料理に砂糖を入れれば甘みが足されて甘くなるし、塩を入れればしょっぱさが足されてしょっぱくなる。それは分かるがじゃあ、味の素を入れれば味が足されて美味しくなるのか、という話になるが、
……、
……、
だいたいその通りなのが恐ろしいところである。
舐めれば分かるが「あ、これ美味しさの塊だ」感がある。そんなのある? と思ってしまうが100年前からある。それじゃめっちゃ広まってそう、と思うがとっくの昔に世界中に普及している。味の素株式会社は世界的大企業なのである。
味や美味しさと言うと漠然としているが、分かりやすくは出汁(だし)の味である。出汁味の、塊。では出汁とはなにかと言われると、昆布やかつお節などから煮出したうま味スープなのであり、その成分は、と言われればそれは調べて行くと「グルタミン酸ナトリウム」であるらしく、それを上手い具合に取り出して調味料にしてしまったのが「味の素」という訳である。
確かにそれは、味の、素だ。
……出汁の素かもしれないが。しかし出汁を取る行為は世界中どこでも行われている訳”でもなく”、むしろ珍しいそうだが、日本食や日本人の作る料理には欠かせないものである。つまりそこが味付けの神髄なのかもしれない。さかのぼってその、味の素が世界中で使われている事を考えると、その味こそがうま味の素である事を、味の素が証明しているとも言える。
それは「味の素」を名乗って然るべきである。
しかしこうなって来ると、「じゃあもうそんな魔法の粉なら、なんにでもかけて美味しくしてよ」という話になりそうなものであるが、だいたいその通りでとっくの昔に色々な料理に使われている。知らなかった人も知らないうちにたくさん摂取している。それは家庭の料理以外でも飲食店だったりするが、”食べる人より作る人の方が依存する”と言われているぐらい、料理に使い出すとやめる事が出来ないらしい。つまりそれだけ”かければ美味しくなる”存在として確立しているのだろう。名前に偽りなし。
うちに置いてないよ、という人もしかし日本人なら毎日味噌汁は飲むだろう。味噌汁に出汁は使われているので、知らないうちにたくさん摂取している。いやあ味噌汁に「味の素」なんか使わないよ、うちでは「ほんだし」使ってるよ、と言うかもしれないが、それは味の素株式会社が売っているものなので、結局意味はあまり変わらないし見事な返り討ちである。孫悟空もビックリの、全ては「味の素」の掌の上である。