「当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます」
出典元、懸賞などでよく使われるシステム及びアナウンス。一度でも疑い出すと世の中を見る目が変わるもの。
というのも大げさだが、まあ信じられない人がいるのも確かだろう。つまり、「抽選」の話である。テレビ、ラジオ、他にもいろいろな媒体で行われる抽選で当たる懸賞品。大々的に行われ、大人数が当たったり良い物がリストにあるほど多数のユーザーが参加するものだが、問題はこの一文である。
「当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます」
で、当然の事ながら、当たる人よりハズレる人の方が遥かに多い。当たった人はその商品が届くのだから疑う余地は無い。問題は大多数のハズレた人の方である。時期を見て、大体このくらいに届かなければハズレたんだな、というのは把握出来る。しかし黙ってハズレるのは悔しいのもあるが気持ち悪い。例えばテレビやラジオなら、この懸賞を行った番組で当選者を発表するという手もあるのではないか。そして実際にしているところもある。が、最近は個人情報にうるさくなって来たからかどうか、それほど発表しなくなっている気もする。そもそも当選者の多いものほど「どこどこの誰々さん、どこどこの誰々さん、他8名の方が当たりました」などと、発表するものの結局漏れは生じていたりする。ハズレたけど配送的に遅れる事もあるかな、と思っている人はその数日間、……そわそわして生活しなければならなくなる。そしてしばらく待ち、届かなければ諦める。が、
「これ本当に抽選して当選者に発送してるんでしょうね!」
という八つ当たり気味の疑問が発生してしまうのである。主催者側からすればこの仕組みは例えば10人当たるところ、9人はしっかり抽選で当てて発送し、最後の一つは自分がもらってしまっても発覚しようがない。当選者を発表していないからである。もちろん企業がやる事なのでじょーしきてきに考えればそういうのは禁止されているのだが、企業の人も人の子である。どうしても欲しかった! 誰にも言わないから! しょうがないなぁ、今回だけだよ。そんな会話が容易に想像出来てしまう。あくまで想像である。
しかしユーザーからすれば、当たる確率など数パーセントである。宝くじとまでは言わないが、早々当たるものでは無い。これは商品に付いて来た応募券を集めて、ハガキに自分で買った切手を貼り、応募した場合でも同じである。当選確率は低い。コストは商品以外にも掛かっている。しかし当選者の発表は、賞品の発送をもって代えさせられている。疑いたくないけど、疑いたくないけど、……ちょっと身内に回してる部分があるんじゃないか、そう思ってしまうのもまた、人の子だろう。
そして客観的に見て、なんだろう。ちょっと一回、見直そうか、と肩を叩きたくなる仕組みであると言わざるを得ない。普通に考えて、手間を惜しまなければ落選者に「応募ありがとうございました、残念ながら今回はハズレとなりました、またのご応募をお待ちしております」ぐらいの返信は可能だからである。それをせずに終わらせる仕組みが多いのは、身内に回す事を常態化しているからではないか、などと勘ぐってしまうのである。そうでなければ今のSNS社会、ハズレた人にメールでも出せば「ハズレのメール来た~、残念」のツイートがそれなりの数出回れば、納得する人も多いだろう。
「当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます」
信じている人は信じている、というより、疑った事のない人が信じている。そして一度でも疑い出すと世の中を見る目が変わって来る、罪な仕組みである。
本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。