「── たぶん株主のみなさんも読んでますからこれ。」
出典元、ウェブ記事「『ネットが生んだ文化(カルチャー)誰もが表現者の時代』監修者インタビュー」より。川上量生(かわかみのぶお)へのインタビュー中、川上量生へのインタビュアーからのつっこみ。
ニコニコ動画が荒れている。先日発表された新バージョン、「く」(クレッシェンド)の内容があまりにも酷く、発表放送のコメント欄は荒れ、プレミアム会員の解約者が続出してしまったのだ。簡単に言うと、以前から散々言われている根幹部分の動画性能が酷い、つまり重い、画質が悪い、という脆弱さを放置したまま、どうでもいい取って付けた様な機能を追加すると発表したせいである。根幹部分の改善を心から待ち望んでいた人々の落胆もあり、一気に炎上してしまった。時代の先駆者であったニコニコ動画だが、最近では新興他社に画質他様々な面で抜かれ、にも関わらずその一番大事な部分を放置して来たツケが回って来たのだろう。
そして発掘される過去の記事。企業も人間も、いい時期もあれば悪い時期もあるので、いい時期に調子に乗って言ってしまったものを、悪い時期に掘り出されてしまうのも世の常である。結構酷い仕打ちではあるのだが、言っている側も結構酷い事を言っているので今回ばかりは仕方のない部分もある。公人であり、責任のある立場にあるからには受け入れるしかない。
川上量生、2chのひろゆきと一緒にニコニコ動画を作った人物である。童顔な上にかなり長い間茶髪や金髪にしていたせいで若く見られがちだが、現在49歳である。ネットベンチャーを語るには歳は行っている方である。肩書はニコニコ動画を運営するドワンゴの会長、およびカドカワだのジブリだのカラーだの、いろいろな有名どころの取締役クラスになっている。そしてカドカワの大株主、つまり見た目に反して大物である。上記の話題があり、掘り出されたのは以下のインタビュー記事だった。ニコニコ動画に対する川上の発言が以下のものである。
2年間新しいサービスが出せなければウェブサービスとしてニコ動に本当の寿命が来るだろうと。どうしようかを悩んだすえに決めたのが、世界で誰もやってない「イベントでごまかす」という作戦です。それがまさかの大成功をしたんですよ。
全体的に緩めのぶっちゃけトーク系なインタビュー記事だったが、川上量生は元からこんな人物である。ひろゆきとイメージが混ざっているかもしれないが。ただ、これはない。思わず返したインタビュアーのセリフがこれである。
「── たぶん株主のみなさんも読んでますからこれ。」
ネット記事とはいえ校閲は経ているだろう。それでも残った、そう言うしかなかったインタビュアーの気持ちも分かってあげたい。
言われてみればだが、確かにニコニコ動画はいつまで経っても重い、画質も酷い。というか現状でそのクオリティは他のサービスと比べて時代遅れである。そこにしか投稿していないユーザーや生主、占有された生放送があるから楽しめているとはいえ、いい加減改善して欲しいと思っているユーザーは多い。というかずっとそう思い、期待していての新バージョンの発表、そしてそれへの落胆、からのプレミアム会員の解約祭りだったのだろう。
このインタビューで2年間新しいサービスが出せない、と話しているが、そのあとには4年経ってもまだ出せていない、と言っている。が、この記事自体が2015年11月の記事である。4年前の記事だ。積んでいくと、8年間新しいサービスを追加していない事になる。サービスというか、どうでもいい機能追加ではなく、根幹部分の改良である。記事を読む限り、現段階でもうどうしようもないのではないかという気持ちになってくる。
それで先日、川上量生がニコニコ動画の運営責任者を退くと発表された。あまりにもあまりな反響だったのだろう。炎上しただけならともかく解約者祭り、そしてドワンゴ及びカドカワなどの株まで下がったのである。そりゃそうだ。残念ながら、へらへらしている場合ではないし、手を打たなくていい状況でもない。少し前にあった開発者の大量離職など、目の前に暗雲は立ち込めたままだが、せっかくここまでやってきたニコニコ動画、どうにかシェイプアップして、なんとか続いて行って欲しいものである。なくなってしまうには惜し過ぎる。
どうしてこう、最初から完成度の高いものは、迷走して行ってしまうのか。責任者が調子に乗ってしまうからなのか。果てしない謎である。