「伊藤園が販売する水素水は医薬品ではないため、健康効果を標ぼうするものではありません。」
出典元、伊藤園のホームページ、「よくいただくご質問」から、「水素水」について。男気溢れる直球回答。
世の中本当に困ったものである。科学的根拠が緩い状態でも簡単に消費者は騙せるのである。やれバナナがいいと言えばバナナが売り切れ、納豆がいいと言えば納豆が売り切れ、このくらいはまだマシと思えるが、問題は科学的要素を載せてきた場合である。主にテレビの影響力である。今回の件、まだまだ売っている「水素水」である。テレビで「体にいい!」と番組をぶち上げ、ちょっと権威のある専門家とやらに「いいですよ」のコメントをもらってしまえば、それでほぼ勝負は付いてしまう。スーパーやコンビニのバイヤーはそれをチェックしているし、視聴者は専門知識を持っている訳ではない。もう一つ言うと、そこまで勧められると一回ぐらいは飲んでみたい。体にいいなら多少不味くてもいいか、のお薬理論もしくは青汁理論が働く。ついでに言うとお薬理論と青汁理論が働くと、多少高くてもいいか、という考えにもなる。
そしてスーパーで山積みに売られていて、飛ぶ様に売れていれば思わず手を伸ばしてしまうのも人間というものである。いや、日本人の性(サガ)かな、と思うのである。例えそれが、科学的根拠で言えば「皆無」だとしても、テレビでやっていた内容も天気予報の様に「……の働きがある成分です」、「……と考えられる」、「……の様な効果がありました(個人差があります)」と断定していないという逃げ口を用意したものであっても、発信者側に悪意があれば簡単に騙す事が出来る。簡単である。歴史が証明している。これまでいくつの初めて聞く成分が登場し、ちまたに溢れ、そして消えて行ったか。体にいいと思われる、普通の水よりなんとか値がいくらか高い、いくらか高いものは体にこのような効果をもたらす。事実だけを挙げるがディベートなら突かれる発表の仕方である。しかしテレビはディベートではない。一方的な配信である。そしてそこに上乗せされる専門家の意見。なぜかその人のビジュアルも説得力に影響する。日本人の悪い癖である。よく考えるとその分野の専門家では無かったりする。それじゃ素人意見と変わらないじゃないか。そこを上手くごまかすテレビ側。そして裏でその人によく聞けば、「いや~、テレビでああ言いましたけどそういう事じゃないですよ?」だの、「そもそも専門が違うし……」との困った意見。しかしテレビ局も直接聞かれたら言い逃れる気まんまんである。責任はたらい回しであり、踊らされるのは消費者である。
しかし。
そうやって一度ブームになってしまえば、「水素水」と名の付いた飲料は売れるのである。例え成分がかなり適当であっても、「水素水」というのが嘘でなければそれは「水素水」だし、宣伝文句に「こんな効果があります!」と断定していなければ、消費者庁からも怒られないし消費者はテレビの印象で勝手に買って行ってくれる。茶番である。……茶番であるが、しかし、飲料メーカーにとって、それは売上拡大のチャンスである事は事実なのである。「こんなの飲んでもただの水と同じなのに……、何倍もの値段で買ってくれる」。ならば、売るしかない。メーカーは仕方なく、もしくは喜びつつ、ただブームに乗っかり、なにも言わずにブームが去るまで売るのだろう。
ただ、怪しいと思う人もいれば、怪しいと思うからちゃんと調べる人もいるし、メーカーに問い合わせる人もいるのである。そしてメーカー側も、問い合わせが多ければ、いわゆるFAQ、「よくある質問」にそれを載せるだろう。伊藤園には「水素水」についてのページが存在している。そこから問6と問9を取り上げる。
Q6.どんな健康効果がありますか?
A6.伊藤園が販売する水素水は医薬品ではないため、健康効果を標ぼうするものではありません。
……!
この……、正直者ッ!! ……いい意味で!
細かい成分の質問にはその正しい回答が書かれているが別にそれで病気が治るだのダイエットにいいだの、そんな事は書かれていない。ド直球なこの質問にも、「健康効果を標ぼうするものではありません」である。つまりえーと……、ただの水って事ですね。
そうなると、こういう質問も出て来る。これをここに載せたのはとても偉いと思う。本当に。いや、罪悪感から成せる技か。
Q9.なぜ水素水を販売しているのですか?
A9.水分補給の1つの選択肢として販売しております。
ドン!
そう返されたら、……なんも言えねぇ。