「TOHOシネマズ上野の開業イベントでゴティックメードの永野舞台挨拶つき上映とかバカじゃないですかね!!2012年の映画で今更!!」
出典元、ryou imai(@nekoneko_pun)氏のつぶやきより。2017年10月10日のものである。
TOHOシネマズ上野の開業イベントでゴティックメードの永野舞台挨拶つき上映とかバカじゃないですかね!!2012年の映画で今更!!こんなの絶対行くしかないじゃん!!!
しかもなんかここは全スクリーンにCHRISTIE社のラインアレイスピーカーが入るとか!よくわからないけど!!— ryou imai (@nekoneko_pun) 2017年10月10日
まあなんと言うか気持ちは分かると言うか完全に同意というか確かになに考えてるんだと言うか。ちなみに以下の様に続くので単純に罵倒している訳では無く、なんて事してくれるんだ、という歓喜の罵倒である。
「こんなの絶対行くしかないじゃん!!!」
いくつか説明が必要だが、そもそも2012年公開の映画の舞台挨拶を2017年にするという時点で意味が分からない。……人が多いだろう。映画「花の詩女 ゴティックメード」は、特異に特異を十段重ねしたぐらい特異な、普通じゃないアニメ映画である。ええと一応……、ネタバレ全開で直進します。
映画「花の詩女 ゴティックメード」は、漫画「ファイブスター物語」(ファイブスターストーリーズ)の作者、永野護の製作した映画である。正式な映画であるがかなり個人制作に近く、主要スタッフが3人とかで、永野護が「原作・監督・脚本・絵コンテ・レイアウト・原画・全デザイン」を担当した。しかも70分の作品なので短めではあるが短編では無い。それをかなりの少人数で制作したものだから、公開までに6年を要している。もちろんその間は映画制作に掛かりっきりになる訳で、永野護のライフワークであるところの「ファイブスター物語」はその間、休載となった。映画の制作発表がされた時に「ファイブスター物語」のファンは、「それはいいからファイブスター物語描いてよ……」と思った事だろう。月刊誌での連載のくせに元から休載も風物詩の漫画なのである。それで、問題は、
いくつもある。
まず角川の映画とはいえ力を入れるのにも限度があったため、それほど上映館数は確保出来なかった事。そして永野護のファンは永野護の作品ならなんでも観たいのでは無く、「ファイブスター物語」が見たいのである。それゆえにそれほど話題にならなかった。ファンの間でも「メカデザインはやっぱ格好いいけどこれはパスかな」との声もよく聞かれた。……。
のにも関わらず「ゴティックメード」は「ファイブスター物語」だったのである。
根底を覆すネタバレなので観た人もそれほど拡散しなかった影響もあっただろうが、「ゴティックメード」は「ファイブスター物語」の連載中の時代の数百年前の話だった。そう公表せずに、違う名前で公開した映画だったのである。そもそも「ファイブスター物語」自体が色々な時代の場面を見せる作品なので、つまりは「ファイブスター物語」そのものである。これは”ほのめかし”とかでは無く、映画のラストに思いっきり「実はこの人は後にファイブスター物語のこの人になるあの人でしたー」がドーンと紹介される。紹介されまくる。しまいには最後の最後に時代が飛んで、現在連載中の「ファイブスター物語」のちょっと先の舞台を、もろに「ファイブスター物語」のキャラが登場するシーンまで映している。そんな話題が広まればファンも多く観に行っただろうが、いや広まったのだがジワジワとした広まりであり、映画というものはそれほど長く上映しているものでは無いので、上映期間終了後に知った人が大量発生した。そうなって来ると観たい。仕方ない円盤か……。が普通の流れなのだ、が、「ゴティックメード」は
”映像と音声にこだわり過ぎたために特別な映画館でしか上映出来ない作品”
となっていて、そのクオリティの理由から、DVDもブルーレイも発売されなかったのである。映画館の中でですら絞られるのだから、DVDは元よりブルーレイでも再現不可能である。まあ、もちろん妥協すれば円盤化出来ない訳では無いのだが、そこを妥協してくれないのも永野護なのである。永野護がいいと言わなければ決して円盤化されないし、おそらく決していいと言わないだろう。実際のところ、「ゴティックメード」は本っ当~に作り込まれていて、例えるならテレビアニメを観たあとに劇場アニメを観ると絵の質や動きの細かさに気付く人も多いだろう。それのさらに上の、凝り性の人が凝り過ぎた上に止める人もいない状況でこわだりまくって延期しまくって作り込んだ作品である。キャラもメカも音も空気感も全て最高クラスである。そして映画館でしか観る事が出来ない作品となった。作品自体、素晴らしい出来であったが、これのおかげで漫画「ファイブスター物語」の連載は9年もの間、休載となった。それも伝説的エピソードである。
で、本当の本気で映画館でしか観られない「ゴティックメード」だが、実は「ドリームパスポート」というシステムでリバイバル上映は定期的に行っているのである。商品で言う受注生産の様なもので、「観たい!」という人が投票して一定以上に達すると、特定の映画館で上映が決まるシステムである。「ゴティックメード」は上にも書いた様に「ファイブスター物語」なので、こちらの濃ゆいファンは相当数居るし結構煮詰まっている。なので比較的定期的にリバイバル上映が行われ、そして今回のセリフ、
「TOHOシネマズ上野の開業イベントでゴティックメードの永野舞台挨拶つき上映とかバカじゃないですかね!!2012年の映画で今更!!」
の出来上がりである。ファンサービスで5年前の作品に舞台挨拶とか。ちなみに「ファイブスター物語」という作品はものすごーーーーーーーーーーく作り込まれた作品で、かなりの部分、先の展開が定められており、作者の永野護が掲載誌の「ニュータイプ」上で作者コメントで今後の展開を書いてしまう事も多い作品である。その本人が登場してなにかしゃべるというのだからつまり、
「こんなの絶対行くしかないじゃん!!!」
という事になるのである。
ここまでの話もかなりどうかしているが、さらにどうかしている話がある。「ゴティックメード」の最後の最後に「ファイブスター物語」のキャラが登場するシーンがあると書いたが、「あれ、なんでこの人が?」という人が居るのである。それ自体がちょっとした謎だったのだが、それが現在連載中の「ファイブスター物語」のエピソードの終盤には解けそうな気配を漂わせているのである。その謎が乗っけられたのは2012年に公開された「ゴティックメード」上でなんですけど! あああああもう! バカじゃないですかね!!