「今日は3割の力で仕事して定時で帰って、週末までに本来のペースを取り戻せ」
出典元、ゲーム団塊198X(@gt198x)氏のつぶやきより。どこかの会社の、新年の社長あいさつ。
このツイートは現在削除されているが、正確には以下の内容だった。
仕事始めの社長朝礼でのこと。(社内放送)
『新年明けましておめでとう(中略)。今日は3割の力で仕事して定時で帰って、週末までに本来のペースを取り戻せ。以上』
と述べて社員の士気が一気に高まった。例え嘘でも『人材を活かす』と言うのは、こういう事だと思う。もう抱いてくれ。
刮 目 せ よ。
世の社長たちも年始最初の日には朝礼があり、社長あいさつがあるだろう。休みが明けて新年最初のあいさつをどういったものにするか様々な想いを巡らせていると思われるが、上の者が下の者を見ているのと同じ様に、下の者も上の者を見ているのである。年末年始の休みムードから抜け出せない社員の気持ちをどう奮起させるか。
「いつまでも休み気分でいるんじゃないぞ!」
「ほら、仕事だ仕事だ、いつも通り動け!」
「社会人なんだからシャキッとしろ!」
……と、単に発破をかけるだけでは芸がない。そんな事は誰でも出来るし、ただでさえ仕事が始まって気が重くなっている社員の気分を、さらに苛立たせる事になってしまう。じゃあどうするか。ボーナスでも出すか? 昨年の業績を褒めるか? いっそおだてるか? ……そう、つまりその部分こそが能力を問われるポイントであり、決めるべき一手なのである。
「今日は3割の力で仕事して定時で帰って、週末までに本来のペースを取り戻せ」
社員の側に寄り添った事を言い、エンジンが掛かるまでに時間が必要な事に関してお墨付きを出す。しかし当然ながら本当に3割で仕事する人もいないだろうという読みがありつつ、ある程度の怠けは飲んであげるという懐の広さを示す。見込まれる結果としては、初日は多少なりとも緩い空気になりつつも、週末と言わず二日目からは本来のペースでの仕事が行われるだろう。やっている事は一種の檄(げき)なのに、社員側への共感を持つ言葉があった故に、ただ尻を叩いた時とは比べものにならないほどの効果を認める事が出来る。まさに職人技である。こんな事を言えてこそ人の上に立つ者の資格がある。
「例え嘘でも『人材を活かす』と言うのは、こういう事だと思う」
まさにその通りである。
そもそもよく言われる話で、人間には”叱られて伸びるタイプ”と”褒められて伸びるタイプ”がいる。褒められて伸びるタイプを叱りつけると当然、動きが悪くなる訳で、その人の性質を見つつ上手く対応するのが出来る社長、ひいては出来る上司というものである。しかし社長や上司にもタイプがあって、そういうことに気を配れる人と、”そんなの知らん俺のやり方でやる”、というタイプがいる。その食い違いで、人は簡単に辞めて行ってしまう。仕事が出来て人の上に立つ事と、人を扱う事が上手な事には因果関係がないのである。
もちろん、事情は複雑であり、そう単純な話ではないし部下におもねるだけがスキルではない。が、なにも考えず感覚でやっている人と、ある程度上手いやり方を知っている人とでは結果も変わってくるのである。こんなもの、人心掌握術の本にいくらでも書いてあるのだろうが、別に本を読む事が目的なのではない。知っている事が重要なのであり、人づてだったとしてもネット情報だったとしても知識は知った者勝ちなのだから! ……そう、真似でも何でも貪欲に取り入れればいい、効果を上げられる方法を採る事、それが正解である。