「さあ かいふくしてやろう!」
出典元、「ファイナルファンタジー4」より、ルビカンテのセリフ。ルビカンテは敵キャラクターである。
「ルビカンテ」、なかなかカッコイイ名前である。検索するとこの「FF4」のルビカンテが簡単に引っ掛かる訳だが、1991年に発売されたゲームのいちキャラクターで、これだけしっかりとした名前なのにほかで使われていないというのも少し凄い。造語でもなく、出典はダンテの「神曲」に登場する悪魔だそうで、そこそこほかでも使われそうな名前だとも思えるのに、ずっとこのキャラクターに占有されていると言える。これは「ファイナルファンタジー」シリーズの知名度の大きさも影響しているのかもしれない。しかしルビカンテはラスボスとかではなく、とあるダンジョンで戦う事になるいち中ボスである。
ただここに、”プレイヤーの記憶に残る”という要素が差し挟まれる。ルビカンテは記憶に残る名敵役、なのである。RPGのダンジョンは消耗戦である。HPがなくなれば戦闘不能になり、MPがなくなれば魔法が使えなくなる。あとは回復アイテムに頼る訳だが、回復アイテムも使えばなくなっていく。そういう消耗を繰り返し、ダンジョンの奥に進んで行くとそこのボスがいる。ボスはもちろん強い。ボロボロになりつつ辿り着いた先で、そのボスモンスターが言うのである。
「さあ かいふくしてやろう!」
HPとMPが全回復し、戦闘へと突入する。敵なのに、これから戦う相手なのに、である。これにプレイヤーたちは衝撃を受けた。そして巻き起こる「ルビカンテはいいやつ」説。いや、別に仲間になるとかではないが。プレイヤーは学校で、職場で、同じゲームをプレイしている人に話すのである。「ルビカンテって戦う前に回復してくれるんだぜ、めっちゃいいやつ」、「そうそう、いいやつだよなー」という具合である。ちょっとしたエピソードだが、これが100万本以上売れたソフトとなるとなかなかに知名度が高い。結局のところ倒すのだが、「あの戦闘前に回復してくれる敵」という印象で、プレイヤーの記憶に残り続けただろう。
「さあ かいふくしてやろう!
ぜんりょくで かかってくるがいい!」
……ここで終わればいいのだが重要な蛇足がある。「FF4」は敵キャラクターのグラフィックが結構おどろおどろしいのだが、ルビカンテも例に漏れず頭身が高く、人型で悪魔の様なたたずまいをしている。それはいい。問題は体を覆う様にマントを羽織っていて、たまに開いた時に見えるのが生足なのである。正確にはボディペイントをした男の生足。マントの下に服を着ている様に見えない。……つまりマントの下が素っ裸なのかこいつは、という想像をされてしまい、セリフ回しが紳士的なだけに、なんだ変態紳士だったのか、という残念なキャラクターとしての印象もプレイヤーに残してしまっているのである。カッコイイ名前で、正々堂々とした、戦闘前に回復してくれる、変な格好をした、いいやつ。それがルビカンテ。ただこれがダブルパンチになって一層、ルビカンテが記憶に残るキャラクターとして覚えられている理由に拍車を掛けている可能性もなきにしもあらず、……なかなかに味わい深い。
本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。