「ニセ広末」
出典元、伊集院光がラジオで桃井はるこを指して言ったネーミングより。世に「ニセ広末事件」と呼ばれる。
時は2000年。伊集院光が自身のラジオ「深夜の馬鹿力」でやらかしてしまった。発端はリスナーのハガキだったが、テレビ番組「D’s Garage21」に出演している桃井はるこを指して「あのニセ広末涼子みたいな奴どうですか」という内容に「もうまさにどうですかですよ!」と乗ってしまったのである。揶揄してしまった。が……、「ニセ広末」こと桃井はるこは昔から伊集院のラジオを聴いていて、尊敬していて! フォロワーだったのである。この話は桃井はるこの知るところとなってしまった……。
それを受けて桃井はるこのリアクションは、この様な大人の対応だった。SNSもブログもない2000年にこういった芸能人の意見がリアルタイムに近いスピードで見られるというのは、ひとえに桃井はるこがホームページをやっていたからだが、しかし伝わってしまった事実はある。そしてその事もするりと、おそらくハガキで伊集院に伝わり、翌週のラジオで伊集院は冒頭、反省から入る。
「味方撃っちゃったよ」
まさにそれである。男女比100:0と言われる「深夜の馬鹿力」において、微粒子レベルでしか存在しない女性リスナーを撃ってしまったとあって伊集院は反省しきりだった。そのうち謝罪に行きたいと言っていたがその後どうなったのだろうか。
桃井はるこという人は、世間一般的には声優なのだろうか? 属性が多過ぎるせいであまり「こういう人」と言いにくい存在である。まあ人間ではあるのだろうが、たぶんたくさんの皮を被ったアキハバラ好きのオタクである。なにせメディアに登場し始めた時はオタク系ライターだった。
が、秋葉原のオタク文化に詳しいです! ……と言っているその人が可愛らしい女子高生だったとあっては話が違ってくる。たまたま可愛らしい顔をしていたせいでアイドル的な活動をしたり、伊集院が見た「D’s Garage21」ではコメンテイター兼、着せかえ人形的な存在で出演していた。おそらく可愛いから色んな衣装を着せてやろうという番組側の思惑があったのだろう。しかしこの人はただ者ではなく、「萌え~」という言葉を使いまくって、今の様に「萌え」を広める影響を与えた、……らしい。唐突に差し込まれる歴史的なエピソード。お前は「キングダム」の呂不韋か。
その後、たまたま声がアニメ声だった事もあり、声優にならないかと勧められて声優の活動を始める。「こんなことある!?」(善逸) 、ないだろう、普通、ないだろう。今では声優・桃井はること言っても違和感はないが、少なくともラジオに出始めた当初は声優という肩書きはなかった。アニラジのパーソナリティをめっちゃアニメ声の女性が担当しているにも関わらず声優ではないというのは完全に意味不明である。声優活動を始めてからは、普段からアニメ声の人が本気でアニメ声を演じるとどうなるかという破壊力を存分に発揮し、周りを食いかねないレベルの声圧を見せ付ける。
そしてこれはその後という訳ではないが、たまたま作曲や演奏が得意だった事もあり、音楽活動も行っている。ユニットを組んでの自身の活動だけでなく、楽曲提供も行っており、音楽業界には多数の桃井はるこ楽曲が存在しているのである。う~ん、もっかい善逸が欲しい。総括すると「多才」という言葉になるのだろうが、安直にそんな言葉を使うのもはばかられる。桃井はるこは桃井はるこという存在である。
話を伊集院光に揶揄された「ニセ広末」に戻す。今「ニセ広末」と言われても伝わりにくいが、広末涼子は当時飛ぶ鳥を落とす勢いの女優であり、日本中に広末涼子ブームを巻き起こすぐらい人気のある美少女女優だったのである。つまり”広末涼子のニセ者”というのは、もはや悪口と言うにも無理がある。今で言うなら「お前、橋本環奈のニセ者みたいな顔してるなっ」と言っているのと同じで、どちらかと言うと褒め言葉なのである。女性が自分で「橋本環奈に似てるって言われます」と言うと顰蹙を買うが、他人から言われるのであれば周りの人は期待してしまう。つまりそれぐらい可愛らしいショートカット美少女が桃井はるこだったのである。過去の話なのだから過去形で話しているが過去形にすると怒られそう――。
今はアイドルのプロデュースをしていたり、自身でも歌っていたり、声優の活動はフェイリスとアニスが定期的に再浮上するのでそれに声をあてたり、YouTubeをやっていたりと、なんだかんだ忙しく活動している。たぶんたまたまあれもこれも出来たせいであれもこれもやれてしまったというだけで、根っことしては……アキハバラ好きのオタクなのだろう。