「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」
出典元、山本五十六(やまもといそろく)の有名な言葉。山本五十六は太平洋戦争時代の連合艦隊司令長官である。
上手く韻を踏んでいるところも記憶されるポイントかと思うが、山本五十六と言えばこれ、というぐらい有名な言葉である。もちろん語り継がれているのは、当時の状況にしか役に立たない教育論では無く、現在の学習にも通じるものがあるからである。子どもの教育から学校教育、社員教育までいろいろなところに通じるものがある。あえてどのフレーズが、と言われれば、「褒めてやらねば」なのかなとは思う。軍隊の偉い人がこのフレーズを入れた事には大きな意味があるのではないか。
業務などでアルバイトやパートさんなどに、簡単な単純作業をお願いする事もあると思う。その際、「口で説明すれば分かるだろう」とザッと説明してドーンと物を渡す。それはそれで、それなりのものが出来るだろう。バイト側も言われた通りにやるだけである。やらせる側としてはとても楽である。が、ここで山本五十六の言葉を当てはめてみる。「やってみせ」、まず一回自分でその作業をやって、よく見てもらう。「言って聞かせて」、もちろん説明しながらである。ここで細かな説明なども入れられる。「させてみて」、そして実際やらせてみる。その間、こちらもバイトたちがちゃんとやれるかを確認出来る。おかしなところがあればそこで修正出来るし、個人差で完成度の違いが出てしまう様なら早めに修正した方がいいだろう。「褒めてやらねば」、そして上手くやれたなら褒めてあげる。普通の事に思われがちだが、ここが疎かになっている職場が多い様に感じられる。人数が多く規模が大きかったり、バイトとの関係が機械的だったりするとそこは「仕事でやってるだけの間柄」となる。やるべき事はやってくれるが、可も不可もない。別に大げさにはしゃいで褒める必要などないのである。「そんな感じ、いいね」程度でいい。相手だって人間である。感情がある。ちょっとでも褒められれば嬉しいし、それによってやる気が出たりするのである。それを省いてしまうのが、「人は動かじ」に通じるところなのだろう。
もちろん、全ての業種において「やってみせ」、「褒めてやらねば」上手く行かないとは思わない。スパルタ教育からの競争を持ち込んだ方が成果の上がる業種もあるだろう。しかしどちらも重要なのである。一つ念頭に置いておいた方がいいと思うのは、人には「褒められて伸びるタイプ」と「叱られて伸びるタイプ」がいる点である。現代社会において、特に新入社員にこれの逆をやってしまうとあっさりと辞めてしまったり、なんだか覇気のないだらだらとした社員が生まれてしまったりするだろう。そういうのを見極めるのも上司の仕事だし、間違えたら早めに修正、フォローするのもまた上司の仕事である。
しかしやはり叱られて伸びるタイプだろうが褒められて嬉しくないはずもない。重要なのは褒めてあげる部分だろう。「最近の若い者は打たれ弱い」などと言われて久しいが、別に褒めないスパルタ教育が正しい保証などもないのである。もし会社でビシバシやっていて新入社員がどんどん辞めてしまうならば、まずは叱る中にも「褒める」という行為を試してみるのも、一案なのではないだろうか。ただ厳しくするだけなんて、誰にでも出来る。叱られて潰れる新人が悪いというのなら、なにも考えず潰れるほど叱る上司も同じぐらい悪いと言えるだろう。