「漏斗」
出典元、口の小さな容器に液体を注ぐ時に使う道具の名前より。「じょうご」、そして「ろうと」。
「漏斗」ってなんだっけ? という人もいるかもしれないが、実物を見れば「ああ、あれね」と納得するであろう、ごく普通の道具である。調理用具でもあるし園芸用具でもあるのでいまいちこういう物と決め付けにくいが、家庭にそれなりにあるものとも言える。「漏斗」の読みは、「じょうご」、もしくは「ろうと」。もしくはと言われても困るかもしれないが、「漏斗」という文字の読み方が正式に”どちらとも読める”というのだから始末に負えない。辞書を引くと、こうある。
漏斗(じょうご)―― 口の小さな容器にはめて液体を注ぎ入れる用具。口は円形で、下方へ行くに従ってつぼんで先は管状。
漏斗(ろうと)―― 「じょうご」の意の漢語的表現。
なるほど、わからん。
ネットで調べると一応、金属製のものを「じょうご」と言って調理用具などに使い、「ろうと」と言う場合はガラスやプラスチック製で理科の実験や園芸とかで使う、という使い分けがある様である。が……、いまいち信憑性に欠ける情報である。
「漏斗」(じょうご、ろうと)という説明でいいのだろうか。「じゅうふく」と「ちょうふく」ぐらい意味が分かりにくい。……いや、意味が同じなのだからどちらでもいいという意味では意味が同じなのだが……。日本語で読みが不安定なら、こういう面倒臭い名称には英語を使うという手もあるが……。
「漏斗」は英語だと「funnel(ファンネル)」になる。
……。
えっ、ファンネル!? なんか聞いた事あるぞ、なんだっけこれは――。
ファンネル―― 機動戦士ガンダムに登場する架空の兵器。
そうだよ、ガンダムでニュータイプが使う、あのピュンピュンしたやつだ。
モビルスーツの外に果実の種みたいに小さな砲台を大量に放出して、それを自在に動かしてビームを撃つやつ。……ガンダムをよく知らない人には、ガンダムは人型ロボットに乗り込む普通の人間たちが戦うアニメと思われがちだが、あの作品は実は、超能力を使った戦いも行っているのである。全員がそうという訳ではないが、中に非常に優秀なパイロットがいて、天才的な技術を持って敵を倒しまくる。……そこまではいいのだが、それらのキャラクターたちは次第にちょっと人間の域を超え始めるのである。背後の敵を見えているかの様に撃墜するさまは、勘がいいとか見聞色の覇気とかで言い訳が効くが、最終的に”念で物を動かす”というサイコキネシスを使い出す。
これをもろに兵器として使ったのがモビルアーマー「エルメス」の兵器「ビット」で、サイコキネシス(サイコミュ)で動かす前提の移動砲台だった。そして「機動戦士Ζ(ゼータ)ガンダム」に登場するモビルスーツ「キュベレイ」に搭載されていた「ファンネル・ビット」が「漏斗」の形に似ていた事で、以後ガンダム世界ではこれらの兵器を「ファンネル」と通称する様になった。おそらく多少でもガンダムを知っている人にとって、「ファンネル」と言えばその「ファンネル」なので、「漏斗」を連想する事は非常に難しいだろう。
なのでやっぱり「漏斗」は「じょうご」か「ろうと」と読んで、いちいち「あれ、どっちだっけ?」と疑問を飛ばし、「どっちでもいいのか……」とその疑問を着地させて欲しい。そして「ファンネル」についてはカッコイイ兵器だなと思いつつも、由来が「漏斗」から来ている事を思い出し、たまに失笑するぐらいが、正しい受け止め方なのかもしれない。