「今年のカレンダー」
出典元、商品名より。もちろん実際にはそんな名前は付かず、「2020年カレンダー」などの名前が付くだろう。
「今年のカレンダー」は、当然今年使うものなので、2020年なら2020年のものを使うのが当たり前である。しかしこれを”買うタイミング”という視点で見てみると、「お、2020年になった、正月休みも明けたしそろそろ買うかー」というのでは遅い。日記帳やシステム手帳にも言える事だが、今年が始まってから買うのではなく、去年のうちに買っておくものなのである。
……深く解説するほどの話でもないが、新年に入って既に一週間が経過していたらその分、使える部分が減っているのである。もったいない。そのぐらいならまあ……、と思うなら、じゃあ3月の頭に「あ、買ってなかった……」と気付いた場合、買うのに躊躇してしまうのではないだろうか。3月になったからって、3月から12月まで”だけ”のカレンダーなどは売っていないのである。絶対に売っていない。
そして視点を売る側に回ってみると、その準備はさらに顕著である。日記帳やシステム手帳、あとおせち料理や年賀状などにも言えることだが、「来年のカレンダー」の準備は今年の10月や11月、ものによってはもっと前から始まっていて、それらの売れる主戦場は12月だろう。そう「2020年カレンダー」は主に、2019年に売れるのである。……まあ、年初に全く売れないという訳でもないのだが、1月中はまだギリギリ、2月になったらもう”一応売りには出してるけど買ってもらえるとは思っていない”扱いだろう。旬の短い商品なのである。
さてここに「今年のカレンダー」があったとする。壁に掛けて使っているのではなく、売れる前の在庫として積み上がっているものである。2020年10月の時点で商品としての「2020年カレンダー」となると、それはパワーワードと化す。棚いっぱいにしまってあったらどうだろう。それは、販売担当者として胃の重い状況となる。一個売れても奇跡だが、むしろ買った人の事を心配してしまうレベルの話である。「今年のですけど、これでいいんですか!?」。そして困った事に、もうどうせ価値は無いし粗品ですと言って無料で配ったとしても迷惑がられる事請け合いなのである。……。
倉庫の一角を埋め尽くしていたらどうだろうか。
そもそも紙の印刷物、小さくまとまる代わりにちょっとの量でも重くなる。処分するのにも費用はかかるし、しかし今年が完全に終わり切るまでは、全く利用価値がないものでもないのである。……という考え方がドツボなのだが、世の中にはその考え方をしてしまったせいで「今年のカレンダー」の処分タイミングを逃してしまう販売担当者が多々存在するのである。1か月ごとに1か月分ずつ価値が落ちていく訳ではないところが、この商品のエグいところである。「今年のカレンダー」は、去年売るものであり、1月が終われば9割は価値が落ちている――。