「Suica」
出典元、交通機関用ICカードの名称より。
ずいぶん一般的になってしまい、みんな日用会話で普通に使っているが、名前が果物の「すいか」と同じである。命名した人も思い切った事をしたと思うが、「スイスイカード、略してスイカ」と言われてみるとなかなか通りがいい。そして発音も、果物の「すいか」が「すいか(→)」なのに対し、「Suica」は「ス(↑)イカ」と、明らかに違いを出せている。世にここまで浸透した今、これは成功したと言っていいだろう。
が、それだけではない。実はニクい隠された意味がある。「Suica」の中にはICが入っている。ICカードなのでICチップが入っている、のはみんなそれぐらい知っているだろうが、その意味以外にも「Suica」の文字の中に「ic」の文字が入っているのである。ちなみこれはその基幹技術である「Felica」と同様だ。今は色々なICカードが増えたのであまり意識できないが、「Felica」から「Suica」が生まれ、その2つしかなかった頃、明らかに意識してネーミングしたんだなと思ったものである。
しかしそこをあえてアピールせず、さりげなく入れて来るところがクールである。……と言いたいところだが、「Suica」を見てみれば分かるが「ic」部分が強調表示されているので、それなりにアピールはしていた。当時最新鋭の技術を使ってのこのハイテク機器の開発に、大きなプライドを持っていたのだろう。実際、切符からSuicaへの移行は改札の利便性を格段に上げ、その一人一人浮いた時間により日本の生産性をアップしたと言っても過言ではない……。
ちなみに続けて利用が開始された関西版「Suica」の「ICOCA」にも、「IC」が入っている。JR東海の「TOICA」にも入っている。ここまで来れば、まず「IC」の入ることを前提にネーミングした事が容易に想像できる。しかしそれ以降も増えていった交通機関のカードには、必ず入るという事はなくなっていった。深読みしてもらうには隠れすぎだし、隠れているにしてはネーミングに制限がありすぎたので、やめたのだろう。もしくは、飽きたのかもしれない。
ところで駅の改札はかつて、駅員が手でハサミを入れていた。カチカチカチカチと改札バサミを素打ちしつつ、利用客を待つ駅員の姿を覚えている人も多いだろう。その後、改札は自動化され、定期券も見せるものから磁気カードを自動改札に通すようになり、そしてICカードへとハイテク化が進んで行った。
自動改札機がなく、Suicaのタッチパネルだけポールで立っている田舎の改札を見たことがある。手動の改札バサミから、自動改札機をすっ飛ばして技術革新が進んでしまったのだろう。ポールが立っているだけなのでカードがNGでも閉じる扉はない。その時だけ駅員が制止するのだろうか。異世界に迷い込んだかと思えるぐらい違和感があったのを覚えている。そういう景色も珍しくおかしいものだが、ひと言で言うなら「シュール」と言っていい光景だろう。