長崎カステラ糖庵の『きれはし』は、切り分ける際に、わずかしかとれない希少品です。
出典元、「長崎カステラ糖庵」の商品「カステラのきれはし」より。小粋な説明文。
ああこれって、カステラを作るとき、端っこからちょっとずつしか取れないから希少なのかぁ……。と、大体1.5秒ぐらい人の頭を考えさせてからタライが降って来るタイプの小ネタである。カコーン! んなこたぁない。商品がボケているので、消費者につっこみを強要するストロングスタイルである。普段つっこみなんてしない人もこれには脳内で「おいっ」という声が出ているだろう。
「物は言いよう」と一時期話題になった一文である。へえ、カステラから少ししか取れないんだ……と正直に受け止めてしまいがちだが、よく考えるとほのかにおかしい。その商品は均等な形をしていないし、本当に”きれはし”なのだから。カステラをカットする時にどうしても出る、端材。ゴミではないが、カステラみたいにお行儀の良いお菓子に「おまけで入れときます」と入れる訳にもいかないだろう。存在価値としてはパンの耳に近い。商品には使えないが、食べられない訳ではないので、通販とかはしないけど工場の直販店ではよく売られているらしい。
そしてそれに「希少品です」と書いて「特別にどうぞ……」とばかりに売っているのだから、そのセンスたるやなかなかのものである。発想の勝利というか、言葉選びの妙というか。「希少」には、珍しいという意味はあるが、良いものという意味はないのである。それを言うならきゅうりのヘタだって白菜の芯だって希少である。が、カステラのきれはしは、価値が落ちるのは同じだが、捨てる部分という程は落ちない。つまりパンの耳程度の価値はある。
アラだのスジだの耳だの皮だの、食材の種類によっては「ほぼゴミ」は大量に出ている。しかしちょっと頑張って調理すれば食べられるものも多く、人によっては売ってるなら買いたいと思うものもあるだろう。そもそも半分廃材なので、売るとしたら格安である。そこにこうやって「希少ですよ……」と触れ込みを付けてしまえば証明終了。もしかしたら誰かと誰かの間で大量のウィン-ウィンが発生するかもしれない。……失笑も大量生産されそうだが、そこに上手く人を洗脳する呪文を載せられるかが勝負の決め手である。商品だってかしこまっているものばかりでなく、こういうユニークな言い回しがもっとあっていいし、許容される世の中だと、少し楽しい。