「音楽鑑賞」
出典元、プロフィールによく使われる使い勝手の良いワード。趣味:音楽鑑賞。
別にこれ自体におかしな点や違和感がある訳では無いのだが、自分から表明しているにも関わらずなんとなくオブラートに包んだ感じを相手に抱かせてしまう、少し特殊な位置にある……趣味の一つ。ちょっとばかり、ありがち過ぎる。どういう人が使っているかと言うと、変なイメージが付いても困るアイドルやタレントが好んで使っている印象がある。別に趣味はお菓子作りでもポエム書きでもいいのだが、それらは深く突っ込まれると証拠を出さなくてはいけなくなるので、そういったものが必要ない「音楽鑑賞」なら色々と無難なのだろう。好きなタレントに「趣味はジャニーズの追っ掛けで月に一回はコンサート行ってます」とか言われても嫌だし、「趣味はソシャゲ(重課金)で家にいる時はずっとやってます」とか言われても嫌だろう。事実だったとしても。
趣味を聞くのはその人の人となりを見るに一番手っ取り早い方法である。しかしアイドルなどは全てを公にしていいというものでもない。知られて恥ずかしいけど可愛い趣味もあれば、周りにドン引きされる趣味もあるのである。なので、ここで上手い具合に当たり障りのないもの、「趣味:音楽鑑賞」がよく使われるのである。つまり「音楽鑑賞」とは、その様な立場の人が自分に下手に変なイメージが付かないように、はぐらかすために設定する趣味という事だ。実際にたまに音楽を聴けばそれだけで嘘ではなくなるので罪悪感もないし、なにより「鑑賞」という言葉に上品なイメージがあるので、とてもスマートである。
しかし「音楽鑑賞」にしておくと「どんな音楽を聴くんですか?」という質問をぶつけられる事がある。それに対しては、ある程度決めて答えられる様にしてあるのだろう。ざっくりと「普通に今流行ってるJ-POPを色々」でもいいし、「洋楽とか」や「クラシックを少々」とかもスタイリッシュ。いくつか名前を出せればそこで事足りるし、みんな聴くメジャーなものだとそんなに掘り下げられるものでもない。ただしそこは注意ポイントでもあり、当然の事ながら「演歌です」と言ったら一気に渋くなるし、「ゲーム音楽です」と言ったら「あ、そっち系?」と思われてしまうだろう。あとヘヴィメタルが好きな人は趣味自体に「メタル」と書く。まあ、フラットなイメージを望んで「趣味:音楽鑑賞」を使っているのだから、そこはやはり無難なものにしておくのが無難なのだろう。
このプロフィール設定の本当バージョンというものも、あるのかもしれない。実際に家でヒマな時になにをしているか考えれば分かるものである。多くの人はそれは「テレビを見ている」だろうし、最近では「ネットを見ている」、「友達(恋人)とLINEしている」とかも多いだろう。単にそれを趣味として認識していないだけで、なんとなく除外しているから趣味にしないだけなのである。「趣味:テレビ」も「趣味:ネットサーフィン」も、そして「趣味:LINE」も本当にあるのかもしれない。一日のうち、それをしている時間の割合を考えれば、どれか一つぐらい圧倒的なものがあるだろう。それらは日常生活において、やらなければならない必須のものではないのだから。