「好きなもの頼めばいいんだよ」
出典元、不詳。居酒屋での誰かの発言。
居酒屋での注文というものは少々難しいものがある。飲み物は比較的自由が利くが、食べ物は参加者の好みに合わせる必要があるため、特にジャンルを絞っていない全ジャンル対応のチェーン居酒屋などだと、選択の幅が広く、注文の品を選ぶのに苦労する事になる。もちろん、定番や王道というものはあって、枝豆をちょこっと頼んで文句言う人はいないだろう、とか、ほっけを一人一皿ずつ頼んじゃまずいだろう、とか、終わり際にてんぷらを頼むと時間が掛かってよくない、とかそういう一般的な常識はあるにはある。しかしその先にも「好み」という壁がある。気の置けないいつものメンバーで行くなら、だいたい料理の好みや抵抗のない価格帯というものは分かっているが、初めての人とだったりするとかなり気にする事になる。注文を任された上で、来た料理にちょっとでも不満を漏らされると序盤からがっくりである。
任せたなら、不満に思っても表に出さないのが大人というものだろう。飲みの席と言っても全てが無礼講ではない。任せておいて文句を言うなんて御法度と言えるだろう。大規模になるほどコースに流れる傾向にあるのもそれゆえと思われる。だから、多少不満に思ってもそれを口に出してはいけないし、それこそ任せてないで自分も選べばいい。みんなでメニューを見て選びながら「これどう?」、「う~ん」、「これいいんじゃない?」、「あ、それ一ついっとこう」、こういうコミュニケーションも楽しみの一つだと思う。
しかし立場によっては頭を付き合わせてそうできない、適当に頼んどいて、という位置にいる人もいるだろう。そういう人はだから、このセリフを使えばいい。
「好きなもの頼めばいいんだよ」。
そして当然、後から文句を言わない、注文の仕方で人を見定めたりしない。どうしてもこれ、というのがあれば、「あ、これあったんだ。俺これ好きでさ、ちょっと頼んどいてよ」ぐらい気を遣った言い方をしてくれるとありがたい。
会社の飲み会に新人が参加したがらない、なんて話をよく聞くが、当たり前である。上司の方が気楽なんだから。幹事は新人に丸投げなんだから。そして酌をさせたり、空いてるのに気が回らないなどと文句を言ったり、手際を見定めたりするんだから。無茶振りで挨拶させたり、仲間内で固まってないでこっち来い、とか楽しさもへったくれもない。そんなの行きたくないに決まっている。これも社会勉強だ、なんて決まり文句は時代遅れである。
上司だろうが部下だろうが、時間外なんだから適度に立場は守りつつ、お互いを尊重してしかるべきである。料理の注文ごときだが、そういう担当者への気配りの出来る人が、器の大きい人というのだろう。