「ダブリューダブリューダブリューピリオド」
出典元、インターネット黎明期にラジオで使われていた表現。過去の話。
インターネットがこれだけ世の中に普及する以前、メディアとはテレビ、ラジオ、新聞だった。1995年頃からインターネットが新たに加わった訳だが、特にテレビはネットを敵視していて「詳しくは、ウェブで」が言える様になるまで、かなりの時間を要した。一方通行のメディアと双方向のメディアは水と油なのである。しかしネットの普及は進み、大きな会社がどんどん公式ホームページを作る様になっていった。となると次第にそれを紹介する必要が出てくる。そして黎明期は、検索エンジンもまた、現在ほど高性能ではなかった。Google一強でもなく、各社乱立していた。つまりどういう事かと言うと、「このキーワードで検索してね」で済ます事は出来なかったのである。「Googleで」と企業名を言う訳にもいかないし、ではほかの検索エンジンで検索してね、となるとちゃんと辿り付ける保証もない。となるとテレビや新聞はURLを丸々載せなければいけないが、ラジオに到っては”URLを読み上げる”必要があったのである。
つまり「http://」で始まるURLを全て口頭で読み上げなければいけないのである。面倒くさい話だが実際にあちこちのラジオ番組で読み上げは行われていた。ここで発生する問題が、記号の読み上げである。「/」(スラッシュ)はそれなりに一般的だったものの、「;」(セミコロン)と似ている「:」(コロン)はこのタイミングで一気にメジャーになった。そしてもう一つ、「.」である。……ん?
「エイチティーティーピーコロン、スラッシュスラッシュ、ダブリューダブリューダブリューピリオド」
「ピリオド」である。「ピリオド」と言っていた。確かに「.」はピリオドだが……、違和感を覚える人がいるなら、そう、現在とは呼び方が違うからである。
「エイチティーティーピーコロン、スラッシュスラッシュ、ダブリューダブリューダブリュードット」
「ドット」である。「.」(ドット)はかつてラジオで「ピリオド」と呼ばれていたが、現在は「ドット」と呼ばれているのだ。いつの間にか、変わっていた。ラジオパーソナリティは局のアナウンサーだったりもする訳で、その放送局で正式に決まっている読み方を使っている。それが変わったという事は、読み方が正式に変わったのだろう。本当は「ピリオド」が正しかったのに「ドット」になってしまった、とかではない。どちらが正しいというのでもなく、”これまではそうだったが、これからはこうなった”というだけの話である。そもそもインターネットというものが新しいメディアなので、たまたまURLに使用した「.」をどう読むか、対応すべく古いメディアがルールを設けて、黎明期には少しだけ迷走がありつつ試行錯誤の末にルールが確定していく、そういう流れである。
実際のところラジオはまだそれをやっている部分がある。「このキーワードで検索してね」で大体行けるものの、URLもたまに読み上げるし、あとはラジオにはハガキ文化があるのでそれを受け継いだメールが、アドレス読み上げ対象なのである。つまり「このアドレス宛に送ってください」のアドレスを読み上げる必要がある。各社なるべく簡単で短いものにしているが、ものによっては「-」(ハイフン)や「_」(アンダーバー)が入っているものもあるし、そこに「.」(ドット)はまず入って来るだろう。そんな時代もあったね、という話だが、まだやってるよ、という話でもある。言葉で文字を伝える事は、いつまで経ってもひと苦労あるのである。
「見えるラジオ」……、うっ、あたまが。
本ページの情報は2022年12月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。