「馬車道です」
出典元、いつかのラジオ番組より。おたっきぃ佐々木のひと言。
おたっきぃ佐々木って誰やねん、という話だが、文化放送のラジオでよくしゃべっていた人物である。長年オタクをやっていたらラジオに出てしまった、みたいな人なのかもしれない。声優の出るラジオによく出ていて、でも声優でも小説家でもアニメ監督でもない人、というか。今の立ち位置で言うと鷲崎健みたいな人。いやまあ実際にはラジオディレクターで、かつては自身がパーソナリティーを務めるアニメ系ラジオ番組を持っていた人物である。名前からしてオタク関係の知識が豊富なのは間違いない。
このセリフは、リスナーからのハガキで「ファミレスの制服で好きなのはどこのですか?」という質問に対しての回答だった。ふむ。フェチ心をくすぐるいい質問ですね。フリフリなのが好きなのか、シックな感じのが好きなのか、といった回答を予想される質問である。意表を突いてアニメやゲーム内の制服を答える手もある。しかしこれに対するおたっきぃ佐々木の返答は、素早く、そっけなく、決め打ちだった。
「馬車道です」
はい次のハガキ行きます。えええええ。
そんな、「そんなの決まってるじゃないか」風に答えられる質問だった? そして「馬車道」ってなんだそりゃ。相撲の決まり手かいな。実在する店名? ファミレスなんだからジョナサンとかデニーズとかそういう横文字の名前を想像していたリスナーを、機械的に道路脇に押しやって、さっさと行ってしまうそんな回答だった。「馬車道」とは。
「馬車道」とは、関東地方でチェーン展開しているファミリーレストランである。
あ、本当にあるのね……。特徴としてはピザの食べ放題があり、たくさんの種類のピザは焼けるたびに店員がテーブルに「どうですか?」と持って来てくれる。客はテーブルにある札で「ください」「もういいです」をアピールして、好きな種類のピザを好きなだけ、お腹いっぱいになるまで食べ続けられるのである。なにそれ楽しそう~。他にはパスタやサラダに力を入れていて、イタリアン寄りの洋食レストラン、と言ったところか。そのサービス内容で店名が「馬車道」とは、男前なネーミングセンスよ。が、それはいいとして。
問題は制服である。「馬車道」の制服は、和服に袴! である。まさかの和装……。和服着てピザをサーブするのか。制服は紫を基調とした大正ロマンなハイカラデザインで、まさに通好み。和服のファミレス自体が珍しいと思うが、ちょっと変わったお店を作ろうとするなら、これほど意外性がありつつも簡単な特徴の付け方もないのではないか。本人たちが動きにくそうなのは置いといて、コロンブスの卵的な発想である。本人たちが動きにくそうなのは置いといて。しかしファミレスの好きな制服を聞かれてこれを即答するとは、おたっきぃ佐々木、ただものではない。これは、そう思わせる玄人好みの回答だったのである。