「鋼メンタル」
出典元、ネット各所。一般的にも使われているかもしれないが。
「鋼メンタル」(はがねめんたる)、この人は精神力が強い、プレッシャーに強い、という意味で使われるが、人物に対してというよりどちらかというとシチュエーションに対して用いられる表現かもしれない。固い物と言えば鉄だが、鉄をさらに鍛えて固くしたものが鋼(はがね)である。ダイヤモンドまで行くと宝石の価値的な意味が出てしまうので、ほどよいところで鋼が使われているのだろう。いや実際は言いやすさのおかげで定着しているだけかもしれないが。類義語としては「鉄の心臓」がある。
日常生活より、芸能人やスポーツ選手などに対するコメントや感想で使われる。プレッシャーと言われるとスポーツ選手を思い浮かべるところだが、スポーツだとどんなにプレッシャーが掛かる場面でも想像の及ぶ限度というものがある。サッカーで言うならば代表戦だろうか。国を代表して戦う負けられない試合で、さらに入れれば勝つ、外せば負けるPKシーンなどは心臓の締め付けられる、最高にプレッシャーの掛かるシーンだろう。野球ならば抑えなければ負ける最終回のピッチャーや、逆に打たなければ負けるバッター側の視点か。チームメイトの個人記録が掛かったシーンにもかなりの重圧が掛かると思われる。しかしながら、ルールの範囲内なのでなかなかこれ以上というものもないだろう。
しかし芸能という視点で見てみると、度を超したプレッシャーというものは存在する。
例えば怒らせちゃいけない芸能界の重鎮に、駆け出しの芸人が失礼なタイプのドッキリを仕掛けるシーンなどはどうだろうか。最終的にネタばらしする事は決まっているものの、仕掛けている最中はどれだけ睨まれるか分からないし、怒鳴り付けられる可能性だってあるだろう。シーンが凍る様な、視聴者にも伝わる緊張感に耐えられるのは、「鋼メンタル」の持ち主でなければならない。
また歌手の視点で言うと、全く盛り上がっていないコンサートでいつも通りのパフォーマンスを行うのにも非常に強いメンタルが要求される。自分たちのファンのいないところでコンサートなんて、と思われるかもしれないが、複数の演者が出演する対バン形式のライブなどでは、そのバンドに全く興味のない客を相手にパフォーマンスするシーンもあるだろう。オラオラ系でいつも通り「お前ら盛り上がってるかー!?」などやるものの、冷めた目で微動だにしない客が相手である。小さい箱でのライブだと客もすぐ目の前で、凍った空気すら伝わる。ちょっと奇抜な語りを入れたり、恥ずかしめのネタを用意して来たりした日には、やっぱやめようの気持ちが生まれるだろう。そんな状況で全て予定通りこなした人には、「やりきりやがった」の言葉と共に「鋼メンタル」の称号を与えられるだろう。
レアなパターンでは、声優をテレビ出演させ、誰も知らないようなキャラクターの演技をさせるシーンなどがある。誰もが知っているキャラの声優に混ぜて、マイナー過ぎるキャラの声優を入れると威力が高い。そのキャラの事など全く知らない司会や共演者の目は泳いでいるし、客席の人たちは真顔である。しかしそこで声優も、そのアニメの関係者やファンの事を考え、「ここにいる人は知らないと思いますが」とも言えず全力で頑張るのである。そんなシチュエーションは絶対に許してはいけないが、まさに「鋼メンタル」の必要なシーンと言えるだろう。
つまり単にプレッシャーの掛かるシーンというよりは、プレッシャーが掛かる上に怖かったり恥ずかしかったりと、度を超した極限シーン、それを乗り越えるのに必要とされるのが「鋼メンタル」である。乗り越えた人らに対して周りの者は、あ、この人なにやらせても「鋼メンタル」で乗り切っちゃうんだろうな、と尊敬の念を込めて拍手を送るべきだろう。