「ってばっちゃが言ってた」
出典元、ネット各所。ここではネットスラングとして取り上げる。
もっともらしい事を言った後にその根拠を目上の人に乗っけてしまうという、なかなかにずるい、そして上手い言い回しである。特に「ばっちゃ」とやらが詳しそうな家事や裁縫、昔ながらの生活の知恵について、ばっちゃから過去に聞いた話の扱いにすると効果が高い。
また、何事かについて言い争っている際に、自分の意見の方が正しいと言いたい場合にも威力を発揮する。なにせ二人分の意見だし、勝手に年の功も付いてくる。しかし現在、このフレーズはどちらかというとおちゃらける時に使われる事が多く、ネット上ではそれも分かって受け取られている印象がある。もしくはシュールギャグというか。いくつか例を挙げてみる。
「車のエンジンが掛からない時はまずバッテリーを確認した方がいいよ、ってばっちゃが言ってた」。これなどはまだありそうな話である。
「パソコンの調子がおかしい時はとりあえず再起動してみるのがいいよ、ってばっちゃが言ってた」。これぐらいになるとジワジワ来る。パソコンに詳しいばっちゃは、いない事はないだろうが……。
「パソコンの電源を入れても起動してる音はするのに画面が表示されない時は、グラフィックボードの不具合が疑われるので、まずグラフィックボードを外して起動してみて、マザーボードのオンボードで画面が点くか確認すると不具合部分の切り分けが出来ていいよ、……ってばっちゃが言ってた」。までやってしまうと、もはやギャグである。
しかしまあ、現在はこの使われ方が主流ではないだろうか。今流行りのスマホゲームの攻略掲示板や、対戦格闘ゲームの掲示板などでも普通に使っている人がいる。そんなものを熱心にプレイしているばっちゃなどいない。つまりネットスラング化しているのである。相手がニヤリとすれば、それはそれでいいのだ。知らない人が聞いても威力があるところに、このフレーズの使い勝手の良さがある。
ネットスラング「化」というのは、一応この言葉には出典元があるからである。アニメ「舞-乙HiME」の主人公、アリカのよく使うセリフ、が実際の出典元である。ネットスラング化と言われるとあまりいい意味に捉えにくいが、世にあふれては消費され、よほどの名作でなければ忘れられていく中で、その中からフレーズだけでも残って行くというのは制作者冥利に尽きるものがある、かもしれない。違うかもしれない。