「絵だと思ったあなたぁ~、残念でしたぁ~。私めちゃくちゃ動きま~す、見て見て~!」
出典元、バーチャルYouTuber、キズナアイの動画「体力測定をやってみる!」より、キズナアイのセリフ。うわ、300万再生を超えている……。
とんでもない世の中になったものである。「YouTube」、は元からあった。ニコニコ動画が無断転送していた時代があったので、ニコニコ動画より昔からある。10年以上か。「YouTube」は「Google」に買収され、そして近年、実は再生数に応じてアップロード者にお金が入る事が判明、「これは!」と目を付けた人が参入して面白い動画を上げる人が増えて来た。いわゆる「YouTuber」(ユーチューバー)である。ヒカキンなどの成功者が有名になると、それに続けとばかり仕事を辞めて「YouTuber」になるぞ、という様な人も多数現れ、”みんな似た様なノリで”、様々な動画を上げる事となった。今では子どもの将来なりたい職業の上位に食い込むほどの問題児っぷりである。しかしこういう、時代が生んだ新ジャンルのいつもの常で、成功するのは上位ひと握りの人だけである。ちなみに「最低限それぐらいはしとけよ……」と大多数が思う様な事すらおろそかにして、とにかくインパクトを出そうとして空回りし、全く人気を稼げていない「YouTuber」もとても多い。編集とか、汚さとか、モラルとかの問題である。人が集まり過ぎる事の弊害とも言える。似た感じとしては「お笑い芸人って簡単そうだなぁ」と思って目指す感じか。お笑い芸人って頭脳の瞬発力が滅茶苦茶求められる職業なんだぞ、と思わない事もない。
さて「バーチャルYouTuber」である。近頃は「VTuber」とも呼ばれている様だが、先駆者と言えば「A.I.Channel」のキズナアイだろう。「最初からクライマックス」を地で行く、最初に登場したのに最初から誰にでも真似出来ない様なレベルの最高クオリティで動画をアップしまくっている化け物である。3Dポリゴンの美少女キャラに、女性声優の可愛い声を乗せてハイテンションでしゃべりまくる。
「絵だと思ったあなたぁ~、残念でしたぁ~。私めちゃくちゃ動きま~す、見て見て~!」
だけでなく動きまくる。そして歌ったり、踊ったり、ゲーム実況してみたりとやりたい放題である。しかし、ものがアニメキャラ的な意味で”欠点のない美少女キャラ”なので、見ているだけでエンターテイメンになる。出色は顔芸だろうか。最近は「俺も俺も」と増えて来ているバーチャルYouTuberだが、とにかく最初は先駆者、せいぜい四天王と呼ばれる4人ぐらいしかいなかったので注目を集め、物珍しさに人が集まった。コメントにも現れているが、諸外国にもファンを多数持っているらしく、動画をアップするとあっという間に翻訳字幕を付けた動画が出回り、世界規模で人気を博している。そしてやはり言われる、こういう事をやるのは「どうせまた日本」の褒め言葉……。変態と受け取っておこう。あ、逆か。
しかし。
よく考えてみると、これは「枯れた技術の水平思考」なのではないか、とも思うのである。キズナアイの特徴は、明らかに”アフレコではない”しゃべりである。どう考えてもそのスピードで合わせられないであろうしゃべりと、そもそも生放送で人間と会話などもしている。つまりこれは、中の人がいてそれにキズナアイのキャラを合わせている。……だけでなく、動きと表情も中の人のモーションキャプチャーをして、中の人の声と動きに、キズナアイのガワを着せて放送しているのである。たぶん。よく考えたものだと思うが、分解していくと別に最新技術では無い。3Dポリゴンキャラの高精度のものはプレステ2ぐらいの時代にはあったし、モーションキャプチャーはもっと前からある。声優はもちろん大昔からいるし、おそらく最新技術で上手くやったと言えるのは表情キャプチャーぐらいだろうか。しかしそれも生放送ではなくアップロード動画なら、インパクトを出すために専門のプロが微調整しているだろう。
元から”企業が資金を投入してやっている”と言われているキズナアイだが、「そりゃ個人で出来ないだろ……」、と思わせるクオリティを初めから発揮している。動画のアップロード速度が早く、こればかりは分業しなければやっていられないところだろう。最近はテレビCMや写真集、テレビ番組……、は事故った様だがキャラが確立して以降、活動の場を広げているキズナアイである。一番笑ってしまったのは「声優に挑戦」だが……。
人の目に留まる機会が増えるほど、「YouTube」にアップした元の動画を見る人も増えてくれる。そこでハマってくれるかが勝負ではあるが、そのクオリティが最高レベルなのだから強いのである。まあ多少の事故はあってもパイオニアとして、業界を引っ張って行って欲しいものである。アップロード動画なのでどの動画からでもどの部分からでも見られるし、ちょっと前のものだろうが最新のものだろうが、キズナアイは”歳を取らないので関係ない”。見た事のない人は一度見ておいた方がいい。