「売れたから映像化すんのにその売れた部分削ってどうすんだ馬鹿か」
出典元、2chスレッド「アニメ監督「原作そのままじゃ・・・オリジナリティを出さないと出さないとダメだよな」」より。どこかの誰かの書き込み。
漫画や小説がアニメ化された際の話である。ファンの間では大きく盛り上がるテーマの一つ。この話題自体がエンターテイメントだと言ってもいいぐらい、楽しい話題ではある。そして評価はおおむね3つに別れる。「成功」、「普通」、「失敗」である。「成功」は良くやった、であり、「普通」は順当に作ったな、であるのに対し、「失敗」した時はやはり粗探しされるものである。特に、アニメーション監督によりいわゆる「オリジナリティを出したがゆえの改悪」が行われた上で失敗してしまった日には評判は散々である。
ただ、難しいのは、やはり表現媒体の違いというものはあるので、皆が普通に思う、「原作通り作ればいいじゃん」という訳にはいかないところである。原作がやや分かりにくい展開や人間関係を持っていて、その部分はややこしいけど盛り上がるところは盛り上がる、そんな場合はややこしいところを少々かみ砕いて分かりやすくし、盛り上がりはしっかり盛り上げるテクニックが必要だろう。そういう時に、場合によっては必要の薄いキャラを間引く、またアクセントを入れやすいオリジナルキャラクターを追加する、などの手法が使われる。が、そのキャラ増減はどちらもやった時点で原作ファンのヘイトを集めてしまうので、よほど上手くやらない限りは悪手の一つである。間引く場合はせめて存在はしていても影を薄くするとか、増やす場合も原作で一応いるけどモブ的なキャラをメイン級に引っ張り上げるなど、原作ファンに気を遣った工夫が必要である。動いて声が聴ければいいというものでもないのである。
そしてもちろん「原作そのままじゃ俺が作った意味ないし俺のオリジナリティを出そう」は大きなヘイトを集める。色々と大人の事情もあるのだろうが、オリジナリティを出したいのなら原作など使わずに元からアニメオリジナル作品を作ればいいのである。他人の作品で変に自分色を出すものでは無い。……もちろん、それで上手く行くパターンもなくは無いが。しかし悪くなるパターンが多く、叩かれる事が多いのも確かである。原作ファンにとってはほぼ一度きりのアニメ化、それをアニメーション監督のしょーもない作家性で駄作にされたのでは堪ったものでは無い。特に原作ファンがイラつくのが、”微妙な改編”。シーンも展開も原作通りなのにセリフがいちいち少しだけ変えられている、などだろう。「なに勝手な事してんの?」である。これについては原作者だって頭に来るだろう。
そしてもちろん最悪なのが今回のセリフのつっこまれ要素である。
この設定が! このキャラが! この展開が! 多くの人に指示されたからアニメ化された! のに!
その大事なところがなくなっている。
「売れたから映像化すんのにその売れた部分削ってどうすんだ馬鹿か」
正にこれである。その監督の目は節穴か。しかし、こんな事が実際にあるのである。
と、アニメ化というのはまあ悲喜こもごもである。しかし先にも言った様に何もせずそのままアニメ化出来る作品ばかりでないのも確かで、分かりやすいところでは一人称小説などはシーンが主人公に固定され、心理描写がてんこもりである。それを完全にそのままアニメにしてしまうと「小説でいいじゃん」になってしまう。心理描写は小説には勝てない。しかしアニメ化されたならば、それの見どころは”アニメーション”、そして声優による”演技”だろう。それらを上手く練り込み、混ぜ合わせ、調理し、あちこちに気を遣いつつ、見どころのある作品に仕上げるのがアニメーション監督の仕事だろう。
大変なのは分かるが、最近顕著な”原作切れ”問題もあるので、小説の原作をアニメ化するのが得意な監督、漫画のアニメ化が得意な監督、オリジナル作品が得意な監督、などに分けて評価し、なるべく得意分野の監督にアニメ化してもらう、みたいな方向性に持って行ければ不幸になる人も少しは減るかもしれない。アニメ化されれば原作は売れるしありがたいものではあるが、売れれば良いってものではない部分もあるのである。