「同型艦」
出典元、いくつかの作品より。フィクションでもいいがノンフィクションでも当然存在するパターンである。
「艦」、なので戦艦や宇宙戦艦など、漫画やアニメで主人公の乗る艦種が他の敵味方のものより頭一つ抜けて性能が高い設定は多く見られる。特別な兵器を搭載していたり、他より速かったり、頑丈だったりする訳である。つまり強い。そして物語の導入と説明として、序盤にその性能を発揮し、例えば一対多などで敵を圧倒するというシーンも良くあるパターンだろう。もちろん、戦艦ものなら指揮官の優秀さや、乗組員の熟練度の高さ、士気なども相まって異常とも言える戦力を発揮する。作品によってストーリー展開は様々だが、そのうちに敵の数や戦略に苦戦を強いられ、しかし機転を利かせ兵器を駆使し、なんとか苦難を乗り越えていくのが主人公艦というものである。
そこに一種、異質な脅威として加えられる要素、それが「同型艦」である。すなわち、現代の技術の粋を極めて建造された主人公艦と、同等の性能を持つ艦が遂に敵に現れた。これがいわゆる、燃えるシチュエーションと言えるものだろう。これまで頼りにして来た索敵機能や攻撃性能、それらが全て同等の敵なのである。もちろん、最終兵器とも呼べる必殺の一撃も使ってくる。そこから戦いは、主人公たちの機転と、これまでの経験を生かしたさらに高度な戦いへと展開していく。「同型艦」という用語自体が馴染みの薄い言葉ではあるが、意味が分かった時のゾワッとする恐怖は少し、体験する価値がある。主人公艦の特別さが強調され続けて来たあとに登場すると、なお良い。また、
”敵に「同型艦」が現れたという事は量産化に成功した可能性もある”という恐怖もあるのである。
この辺りはその作品のパワーバランスのさじ加減次第だが、雑魚を蹴散らして進んで来た主人公艦が「同型艦」と対峙して戦慄する、そしてさらに、周囲の状況からその「同型艦」が複数台完成し、対抗しにこちらへ向かっている、などがあるだろうか。ものによっては不意を打たれていきなり3台から5台の「同型艦」と対峙、もしくは囲まれているシチュエーションもある。絶望の演出としてはもってこいである。もちろん、主人公艦がそこでそのままやられてしまっては話がバッドエンドで終わるのでなんとか切り抜けるのだが、優位性のなくなった状況からどうしていくか、しかも同性能の艦と複数同時に戦わなければならない、という、とても魅せがいのあるストーリー展開である。
あまり序盤で出してはいけないタイプの要素で、序盤の快進撃、中盤やや苦戦しつつも乗り越え、終盤あと少しというところでの絶望的戦力の逆転、こういうものがまた、観てる側には堪らない要素だったりするのである。そこをどう乗り越えて行き、締めるかが作品の見せどころであり、理屈抜きにして根性論や主人公の覚醒で倒してしまうと冷める視聴者がいるので、理屈を通しつつ機転を利かせて多少の犠牲といくばくかの奇跡は挟みつつも、ギリギリ勝利する。その辺りが名作となる条件だろうか。
漠然とした話になったが、圧倒的な主人公側が無双している時に現れる「同型艦」、そのシチュエーションはなかなかに熱いものがあるので、そういう作品に巡り合えたらその後の展開を気にしてみるといいだろう。ちなみにこれが「能力」となると比較的よくあるパターンになるので、少し違って来る。