「巨大なお世話」
出典元、不詳。「大きなお世話」のさらに大きい版である。
そんな表現は無い。が、使われていない訳でも、ない。なら無いとも言い切れないとも言えるのだが、これは言葉の変化球である。投げる直前にほんの少しだけ握りを変える。
「大きなお世話」を使う場合に、それじゃちょっと言い足りない場合に、もしくは、それじゃちょっと直接的過ぎかな、と思う場合に咄嗟に使われる。効果が真逆だが、そこは言葉なので、表現次第である。例を出すと女性が上司からセクハラまがいの事を言われた際、「大きなお世話です!」程度だとその怒りが伝わり切らないと思い、大きなお世話よりもっと大きなお世話である事を伝えるべく、不快感をブーストした表現が、「巨大なお世話です!!」になるだろう。またもしくは、男性が仲のいい友人からちょっとした事をからかわれて、大きなお世話だと言い掛けた時、そこまで怒ってないのに本当に怒ってると思われるのを回避すべく、「巨大なお世話だ、ははは」とでもしてやると相手に伝わる印象が正確に近くなるだろう。こちらはそもそも「巨大なお世話」というフレーズ自体が少し面白いので成り立つ事でもあるが。
とはいえ基本的には「大きなお世話」では伝わる怒りが足りない場合に使われる表現だろう。まあ、そうそう使われない表現でもあるのだが、そこは怒りなどで瞬間的に頭脳が活性化した時、キュキュキュッと語彙が頭の中からおかしくない範囲のギリギリの最適なフレーズをチョイスし、突発的に出来上がる表現とも言える。そういうところで頭の回転が早い人というのは結構いる。
フレーズ自体が面白いというのは重要な点で、創作、例えば漫画などでキャラクターの個性を上手く出したい場合に、この様な独特な表現をさせてみるとそれだけでキャラの個性が強調されるだろう。単に特殊な語尾を付けるのとは少し違う。ただ、登場キャラクターの全員が全員そんなキャラになってしまうと、西尾維新作品の様にくどくなってしまうが、キャラがみんなありきたりな表現をするよりはずっと良い。漫画でも小説でも台本でも、創作ものではそういった試みをしてみて損はないと思われる。単に新しい表現を聞いて感心してみたいという欲でもある。通常の用語を組み合わせて意外性のある印象を与える表現にする……、言うのは簡単だが新しく創るのは難しいものである。近い例えを出すならジョジョの「頭脳がマヌケか?」辺りになるだろうか。
この様な表現は、伝わらなければ意味がないが、伝わってしまえばそれはそれでOKという事もある。日本語の組み合わせなら「なんか表現がおかしいけど意味は分かるぞ?」という事もあるだろうし、同じグループ内だけで流行っているフレーズとかもあったりする。業種によってはその職場でしか使われていない専門用語があったり、それを動詞にしてしまって人に当てはめる表現もあるかもしれない。「テンパる」などはパニック寸前の状態として一般的にも使われているが、そもそもが麻雀用語である。変なところから変な用語が広まるのも、面白いものである。