「はくしょん」
出典元、くしゃみをする時の一般的な聞こえ方。セリフ。
……セリフ?
日本ではくしゃみをする時「はくしょん」と言う。いや……、言わなければいけない決まりは無いのだが、しかしいつの間にか決まってしまった常識である。……常識? 「はくしょん」に日本語としての意味は無く、音としてそう聞こえているだけなので、他国ではその国の言葉で別のセリフが当てはめられているのだろう。そう考えると「はくしょん」は日本語である。ネコの鳴き声が日本では「ニャー」なのにアメリカでは「meow」とされている様なものだ。そう考えると「ニャー」と鳴くネコは日本人である。さてしかし、だからといって、日本人はくしゃみの時に「はくしょん」と言わなければいけないという決まりもないのである。
そんな事当たり前だと言うかもしれないが、なぜか強迫観念の様に「はくしょん」に沿ってくしゃみをしようとする、してしまう人も存在する。つまりどういう事かと言うと、急にくしゃみがしたくなって息もロクに吸わずに出てしまった、
「げふん! ……しょん」
という謎の発声が発生するのである。今あなた、申し訳程度に「しょん」を付けましたよね! それを付けないといけない決まりは無いんですけど!
くしゃみは突然襲ってくるものである。兆候があれば余裕を持って構えておけるのだが、場合によっては口を手で塞ぐのも間に合わないぐらいの早さで突然炸裂してしまう。なのでほかのフォローをしているヒマもないし、周りに人がいたとしたら迷惑を掛けない事を優先してしまうものだろう。慌てて口を塞ぐ事を最優先にするのもいいが、カップに入った飲み物を持っていたら手に注意が行くのが自然だし、そうして欲しい。しかしそちらを優先したら口を塞ぐのに支障が出る。
「あ、お疲れさまですおはようございまぶはん! ……しょん」
だから「しょん」を付けなくていい。が、これはつまり、「はくしょん」というセリフを言わなくてはいけない決まりは無いけど言いそうになり、しかしそれをやめる判断が間に合わなくて「しょん」が付いてしまった、そんなところだろうか。考える時間と優先順位で、とにかく口を塞ぐ事を優先したらセリフを調整する時間がなかった。おそらくこのシーンで周りに提供されるのは笑いだろう。なかなか瞬間最大風速の強いギャグである。あ、しゃべってる途中にくしゃみ炸裂させちゃった、飛沫が……からの「しょんって!?」という意外性と、……分からないではない共感度の両立した高度な天然ギャグ、なのかもしれない。
「はーーーっくしょん! ……てやんでぇバーローちくしょう!」
くしゃみと同時に悪態を撒き散らす人も多い。