「あ、キャベツちょっと多めにください」
出典元、不詳。どこかの居酒屋での、客の発言。気軽な発言である。
おそらく串かつ辺りだろう。もちろんこれは、「追加料金払うのでキャベツを多めにください」という意味では無い。「からしちょっと多めに付けてもらえます?」レベルの気軽な注文である。タダでやってもらう気まんまんの発言であり、実際どのくらいかは不明だが、店員はキャベツを多めに盛ってくれた様である。
どこまでならいいのか。
たとえばトンカツ屋にとって、キャベツはあくまでオマケである。カツが主役であり、有名チェーン店でもキャベツおかわり自由などというところもある。主役では無いからだ。しかしたとえばこれが居酒屋などにあるキャベツがメインの「塩だれキャベツ」とかだったらどうだろうか。「塩だれキャベツ、キャベツちょっと多めでください」。……。良い訳がない。だったら大盛りを頼むか、2個頼めという話である。大将にわさびちょっとくれ、というのとは違うのである。しかしこの、サブならOKでメインならNGというものがあるのはちょっと面白い。主役にも脇役にもなれるキャベツならではなのだろうか。
類義語に「濃い目で」というものがある。「レモンサワーください。濃い目で」というやつである。もちろん店によっては濃い目の料金が設定されているところもある。サワーの焼酎倍でプラス200円、などたまに見掛ける。設定されているのなら、そのまま追加料金になってその注文がされるだけである。問題はそういう設定のされていない店で、気軽にメインものに増量サービスを頼んでしまう点にある。しかしたまに見掛ける光景だろう。そしてあまり直接断るシーンというのは聞かない。店員はどうしているのだろうか。ポイントは、……、
相手が酔っ払いというところだろうか。
断りはしないし無視もしないが、ほんの”気持ち程度”多く焼酎を入れてレモンサワーを作る。あんなものしょせんは、氷の大きさ加減でざっくりしてしまうものである。焼酎を2、3ミリ多めに入れて、まず自分を納得させるしかない。そして客から「これホントに多めにしてくれた?」と言われたら「しましたよ~」と本当の事を言えばいい。2、3ミリでも多めは多めだ。罪悪感が働くとしたら客にでは無く店長とかにだろう。まあ自分が店長なら自分の判断でやってしまえばいい。そこの部分にはおそらく、客が常連かとか、態度がいいかとか、その辺の”こちらの気分次第”な部分も入ってくるだろう。
この辺りがおそらく居酒屋の店員の難しいところで、「それ無理なんですよ~」と言って客を怒らせてしまうとマズイし、でもへいへいOKして調子に乗られても困る。相手は酔っ払いである。いつもやってくれてるからまたよろしく、のつもりでまた頼んでくる。どこかでキッパリと断らなければならないが、しかし断らないが飲まないという手もある。チェーン店でマニュアルがしっかりしていた方が、こういう場合は楽が出来るだろう。はっきりと正解は見付からないが、せいぜい自分がその迷惑と心労を掛ける側にならないよう、心掛けておきたいものである。