「ガテン」
出典元、リクルートから発行されていた求人情報誌の名称。1991年創刊、2009年より休刊。
「ガテン系」という言葉があるが、その語源となった雑誌である。ガテン系は大まかに言えば肉体労働系の仕事、という意味だが、もう定着してしまっているので説明しなくても大体の人には伝わる用語だろう。しかし肉体労働系の仕事がガテン系と言われ、それ専門の求人情報誌として「ガテン」が出来た訳では無いのが面白い。雑誌「ガテン」がそれ系に特化した雑誌として創刊されたあと、その影響で「ガテン系」という言葉が生まれたのだ。普通、逆である。が、たまにこういう事が起こるから世の中は不思議なものである。
ちなみに雑誌「ガテン」では土木、建築、ドライバー、調理師、メカニックなどの求人情報を扱っていたらしい。現在のイメージでは土木、建築がほぼメインに考えられがちだが、いわゆる「力仕事」のカテゴリーでドライバー、調理師、メカニックも入っていたのだ。現在の認識を覆す必要は無いが、どっちが正しいかと言われれば語源が雑誌な訳で、ドライバー、調理師、メカニックも含めるのが正しかったのだろう。言ってみればトラックの運ちゃん、コックさん、自動車の整備士なども「ガテン系」だった訳だ。
「ガテン」の意味としては「ゲートイン」説も少しあるが、メインの説はほぼ「合点」、ガッテンから来ている様である。「がってんだ」のガッテンである。ちょっと古くさいというか江戸っ子言葉っぽいが、テレビ番組「ためしてガッテン」の「ガッテン! ガッテン! ガッテン!」を連想すると分かりやすいだろう。しかし直接繋がってる感じはしない。なんとなく付けたのだろう。
肉体労働系の仕事、と言うとブルーカラー、ホワイトカラーというカテゴリー分けも存在する。いちいち違う言葉を付けなければならない世の中になったのが面倒くさいが、「ガテン系」もそういう意味でオブラートに包もうとして使われ出した用語だったのだろう。職業に貴賎は無いし、むしろ日頃から体を使っていて「ガテン系」の男は男らしいパワフルな肉体をしているのだが、イメージは時代と共に乱高下するので、よく分からない配慮と共に、よく分からない価値観が生まれて行くのだろう。この文章も謎の配慮と微妙な要注意用語を避けて書いているが、つまり「ガテン系」で伝わるなら楽でいいし、ちょっと格好いい用語だし、定着してくれたのでありがたい存在である。
都市を見晴らすとたくさんの建物が見え、それらは皆「ガテン系」の人たちが汗水流して作りあげた賜物である。周りからの感想は「凄いなぁ」でいいと思う。