「そういう時は頭ごなしに謝るに限る」
出典元、不詳。処世術、もしくはビジネス的格言。
「あ、やってしまった」、というミスは誰にでもあると思う。誰にでもあるという事は、誰にでもそのあとどうしたかがある訳で、特に業務上他社に迷惑が掛かる、そしてどう考えても自分が悪い場合、目の前が真っ暗になったりするものである。こういう場合、まあ役職や立場にも寄るがまず同僚への周知と上司への報告、そしてこれも速やかに、迷惑を掛けてしまった取引先への連絡が必要になる。一般的に、とにかく早い方がいい。そして場合によっては上の者を連れて謝罪訪問しないといけなくなったりするが、まずは一報である。こういう時はメールでやってはいけない。一番伝えるのが心苦しい担当者に、直接電話を掛けるのである。ミスしてしまったのは自分なのだから、仕方がない。そして、度々言うが場合に寄るのだが、その場合のテクニックにこういうものがあると聞く。
「そういう時は頭ごなしに謝るに限る」
頭ごなしに謝る。何やら不可思議な日本語だが、意味が分からない事もない。つまりは「まず事実を伝え」、その後「こちらからひたすら謝る」という事だ。逆に言えば先方からしてみればお怒りの返事しかない、こちらとしても謝るしかない状況という訳だ。だったらもう、会話のキャッチボールそっちのけでとにかく向こうが怒りながら注意と指摘をして来る前にこちらが言ってしまう。「やってしまいました、すいませんでした、普段から気を付けていたのですがたまたま連絡の不備が重なりこの様なミスが起こってしまいました」。そして当然、再発防止策も添える。「なので今後はダブルチェックを心掛け、連絡系統をしっかりと確認し、指さし確認を行い、同じミスのないように心掛けます。今回のミスの後処理はこれからすぐ行います。完了したらまたすぐ報告します。落ち着きましたら経過報告書もまとめます。すいませんでした。本当にすいませんでした」、……とまあ、相手との関係にも依るが口調は調整しつつもこれだけまくし立てたら相手としても言う事がなくなってしまう。まくしたてたら、いや、「頭ごなしに謝ったら」。
実際のところそのミスにどのくらいの重きを置くかは人それぞれである。自分では致命的なミスを犯してしまった、と思っていても、相手先としては「まあ1回ぐらいはやると思ってたよ」ぐらいの時もある。そしてミスは、同じミスを繰り返さない事が重要なのだ。相手先が「これは重大なミスだ!」と思ったとしても、つまりは「解決」と「再発防止」が重要な訳で、そこまで分かった上で謝罪されてしまってはもはや言う事がない。「じゃ、それをちゃんとしてくださいね」という様な意味の事を伝え、あとはその人の性格でグチグチ言うか言わないか、上に伝えて大ごとにするかしないか、といったところか。逆に言えばミスが大きく、連絡も遅く、再発防止も伝えて来ず、怒られるのが怖いからとメールで謝罪などしてきたら、心証は最悪である。電話の後正式に謝罪メール、もしくは訪問、などは必要かもしれないが、まずは一報の電話である。
ミスはあった。しかしその相手がその後の対応を全て把握していて急いで実行しようとしていて、さらに頭ごなしに謝られたら、もう怒る時間さえ無駄である。怒られないためのテクニックだが、双方にとっても案外、精神的に無難な落としどころと言えよう。