「既読」
出典元、主にSNSアプリ「LINE」において使われる、余計な機能の名称。恐怖の二文字。
「既読」(きどく)とは、「LINE」上でチャットをする際に、自分の打ったメッセージを相手が読んだら表示される二文字である。「既(すで)に読(よ)みました」の意味。過去にはメールにおいて「開封確認」という機能があったが、というか別に今でもあるが、その機能をチャットに組み込んだものである。おそらく、開発者はこれを思い付いた際、「便利じゃん!」と思った事だろう。コミュニケーションアプリである。スムーズなコミュニケーションを円滑に行える様、便利な機能として思い付いただろうし、上の者も「お、便利だね、入れよう入れよう」と純粋な好意でこの機能は実装されたと思われる。そして、ストレートに考えると確かに便利な機能である。
しかし現実世界の人間関係は変化球の連続である。メッセージを送った、「既読」が付いた、読んでくれた、さあ、……。いつまで経っても返事が来ない時、人はそれを「無視された」と感じてしまうのである。これは電話とメールの違いで通ってきた道なはずである。家族でも友だちでも、業務上でも、電話が掛かって来たら今の作業をほっぽって取らなければならない。その煩わしさから、メールが生まれた時、「相手が読める時に読めばいい」と、時間を気にせず送れる様になった。初期はパソコンでの受信がメインだったため、パソコンの前にいて自分のタイミングで受信確認するのだからいつ送っても問題ないだろう、という認識だった。これもまたケータイの普及によって崩れて行くのだが、「開封確認」を使わない限り一応メールはまだその常識内に留まっている。そこで現れたのがチャットアプリ、「LINE」である。メールより頻繁にやり取りをしたい相手と、素早くやり取りが出来る。チャットなので文字を打つだけで良く、電車の中などの公共の場でも使えるし非常に便利、特にグループ機能がいろいろなものに使える事が判明し、大いに流行った。先陣は「Skype」だったかと思うが、なんやかんやで今の「LINE」の普及率は群を抜いている。
が、「既読」である。「LINE」と言えば「既読」であり、「既読無視」もしくは「既読スルー」問題が出て来てしまうのである。つまり、こちらのメッセージを読んでくれたのに返事がない。時間の確認や急ぎの質問だったなら困るだろう。しかしそれだけでは無い。どうでもいい会話で無視されてしまうと、嫌われてるのかな、と思ってしまい次のメッセージを送るのが怖くなる。逆に送られた側も、相手からのメッセージを読んだもののなんて返していいか分からない場合もある。読む時間はあったが返事を書く時間は無い場合もある。しかし「既読無視」したと思われるのも悪い。そこで苦肉の策として、スマホの通知画面に少しだけ表示されるメッセージだけ読み、「既読」を付けずにある程度内容を判断して返信するかを決める、という手を使ったりする。
既に世の中には、既読の付かない裏技や設定情報などが溢れている。それだけ悩ましい問題という事だ。なぜ「LINE」側でこの機能のオンオフが設定出来ないのかは謎だが、おそらく開発者が「便利じゃん!」と思っているからだろう。「Facebook」もそうだが、勝手に電話帳やらアドレス帳から知り合いを探して来て勝手に通知してしまうなど、人によっては人間関係に取り返しの付かない様な機能を平気で実装する様なところである。それもおそらく「繋がれて便利じゃん!」と体育会系のノリで自己肯定しているのだろう。離婚した元嫁とかも平気で引っ張って来る空気の読めなさは、さすがとしか言い様がない。悪い意味で。
とにかく全ての場面において迷惑な存在である”訳では無い”「既読」の二文字だが、プレッシャーを感じる人が多いのも事実である。そして開発時には明らかに想定されていない不測の事態である事も容易に想像出来るが、なくしてくれる可能性もここまで来たらないだろう。上手く、付き合って行くしかない。便利で不便な世の中になったものである。