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小説

“ソードアート・オンライン”原作小説2巻『ゲームは クリアされました』ネタバレ

投稿日:2019年8月23日

『ゲームは クリアされました』

出典元、川原礫の小説「ソードアート・オンライン2 アインクラッド」より。「ソードアート・オンライン」シリーズはアニメ化、映画化もされているライトノベルの超人気シリーズである。

「ソードアート・オンライン」、現在のライトノベル業界がこうなっている元凶の一つと言ってもいい作品である。”初めてこの題材を扱った”などの厳密な話題になると諸説あるので断定は出来ないが、少なくともこの作品を読んで”これに似た作品を書きたい!”と思った小説家志望の人はとてもとてもたくさんいた事だろう。それぐらい、真似したくなる世界設定の作品である。

1巻、2巻において舞台はタイトルにもある「アインクラッド」である。ここ数年、ついに現実でも商品化されてきたVR、バーチャル・リアリティのゲームであるが、その進化版というか、理想進化版である。ナーヴギアというヘルメット形のインタフェースを付け、ゲームをスタートすると、その中世ヨーロッパ風RPG世界「アインクラッド」に感覚ごとダイブ出来るという夢の様なゲームである。現実においては当然、まだゴーグルと音声、操作ができるだけだが、「ソードアート・オンライン」は少し未来の設定なので、ゲームを開始すると現実の世界では意識を失い、五感ごとゲームの中に入れる様になっている。まさにフルダイブ。そしてそこは、MMORPGと呼ばれる世界中の人たちが同じ「アインクラッド」という浮遊城で自分のキャラクターで遊べるという、ゲーマーにとっては理想の世界だった。

……が、悲劇は起こる。正式サービス開始早々、あるはずのログアウトボタンがないぞ、と気付いた冒険者が出始めた頃、プレイヤーは強制的に集められ、開発者である茅場晶彦からのメッセージを受け取るのである。すなわち、このゲームをクリアするまでログアウトする事は出来ない。ゲーム内での死亡が現実世界の死亡に直結する。外部から強制的にナーヴギアを外そうとしてもそれは適わないし、無理にやろうとしても死亡する……。一瞬にしてこのゲームはデスゲームへと成り代わったのである。

しかしまたそれを聞いたプレイヤーのリアクションがリアリティあるもので、その後のプレイヤーごとの生き方の別れ方も説得力のあるものだった。また読者としても「おおおおお……!」と戦慄する展開である事は否めない。真似したくなる世界設定とはそういう事である。そして実際にしばらくの間はこの設定を真似した作品が、素人小説家の集まるネットサービス、「小説家になろう」を中心に大量に溢れた。

この作品のヒットはMMORPGというものが世の中に浸透して来た頃だった事、それからバーチャル・リアリティの現実味も近付いて来ていた事、元々ネットで無料公開されていてそもそも人気があった事など、諸々あるが、とにかく作品自体の完成度が高かった事が大きい。1巻を読み終わった時の、名作映画を見終わったあとの様なむずがゆくなる様な感動はなかなか味わえるものではない。まさに名作である。しかし今回のセリフは2巻から取り上げている。

ぶっちゃけて言うと、いや初めからぶっちゃけているが、「アインクラッド」は主人公キリトの手によって1巻でクリアされ、世界も消滅している。映画を見終わった感動、というのはそういう意味である。で、2巻。どうなるんだ、どうなるんだ、どうなるんだ、あ、はい。また「アインクラッド」? 消滅したけど。2巻は……、「アインクラッド」クリア消滅前のミニエピソード集です! がっく~ん。

とりあえず期待値は1巻ほどではなかったが、しかしそこは作家の腕、そもそも作り込まれた世界設定なので細かい部分も見応えがある。登場するヒロインがあらかたキリトに惚れていくのは閉口ものだったが、鍛冶屋を営むリズベットのエピソード「心の温度」で、1巻でのクリア時の人々の様子が描かれたのだ。その模様がまた感動ものだった。

突然のアラームと、突然消えるNPC。完全に、ゲーム始まって以来の初めての現象だった。そしてシステムアナウンスが流される……。この演出は、なかなかではないか! 以下、引用!

『現在 ゲームは 強制管理モードで 稼働しております。全ての モンスター及びアイテムスパンは 停止します。全ての NPCは 撤去されます。全プレイヤーの ヒットポイントは 最大値で固定されます』

『アインクラッド標準時 十一月 七日 十四時 五十五分 ゲームは クリアされました』

? ……。

『プレイヤーの皆様は 順次 ゲームから ログアウトされます。 その場で お待ちください。 繰り返します……』

それを聞いたプレイヤーは飛び上がって喜んだ。読者まで伝わって来るこの喜びと感動。そうか、これを書いていなかったんだ。これを書きたかったから、2巻も「アインクラッド」だったんだ。勝手な憶測だが、それぐらい読み応えのあるシーンが突然ぶち込まれた中盤のミニエピソードだった。「ゲームは、クリアされました」。そんなシンプルな一文がこれだけの破壊力を出してくる。一時代を作る作家の筆には、それぐらいの威力があるというのを実感させられた瞬間だった。

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