「ロマンス小説」
出典元、小説のジャンルの一つ。恋愛小説の一種。
「ロマンス小説」は恋愛小説の一種である。「ハーレクイン・ロマンス」とも言われる。特徴は、男女の恋の話で、初めはたくさんの困難があるも乗り越え、そして結 末 が ハ ッ ピ ー エ ン ド に な る 事。
えええええ!?
”結末がハッピーエンドと決まっている”という、驚きのジャンルである。普通の恋愛小説となにが違うかと言われればまずそこが違う。読者は恋愛小説を読む時、結果がどうなるかワクワクしながら読むのである。作品によっては三角関係などもあり、どっちとくっつくかを予想しながら楽しんだりもするだろう。二人の男女の話だとして結ばれなかったとしても悲しく終わるのではなく、その過程を前向きに捉えて気持ち良く終わる作品もあるだろう。しかし「ロマンス小説」はそうではない。”ハッピーエンドが前提”なのである。そんなのが小説として成り立つのか――。
が……、しかしよく考えてみると小説というものはなかなかに定型を守って作られるものなのかもしれない。ミステリーが最も分かりやすいが、事件があって謎解きがあって解説がある。金田一少年なら犯人の悲しい過去と自殺がある。バトルものなら物語の中、倒さねばならない敵が分かってきて、まずは中ボスを倒し、最後は大ボスと死闘を繰り広げ、勝利する。続刊ものなら負ける事もあるだろうが、大体は勝つだろう。SFものだって追っていた謎の解明が全く行われないまま話が終わる事もないだろうし、歴史ものだってメインとなる大きな事件をすっ飛ばす事もない。あらすじは存在して、テンプレートは決まっているのである。そう考えるならば、ハッピーエンドと決まっている小説のジャンルがあっても不思議ではない。
「ロマンス小説」にはもう少しお決まりがある。主人公が女性である事。女性の読む恋愛小説なため、感情移入しやすい女性主人公も前提なのである。さらに作者が女性である事。これは男性作家には書けない女性の繊細な感情を表現しなければならないため、らしい。そしてイラストレーターも女性である事。これはなんというか、たぶん恋愛対象の男が”ザ・少女漫画のイケメン”、なために男性よりも女性の方が得意なのだろう。この辺りの事情は少女漫画の作者が女性な事と共通する。まだある。主人公のヒロインと恋をするのは長身マッチョでエリート金持ちのイケメンである事。そ、そこまで決まってるの……? そこまで決まっているらしい。
つまりシンデレラストーリーなのである。シンデレラストーリーというかシンデレラのストーリー。貧乏でさげすまされて生きてきた主人公(かわいい)が、金持ちのイケメンに目を掛けられて恋をする。数々の苦難を乗り越えて二人は結ばれる……、というテンプレートに沿った亜種の大量生産である。「ハーレクイン・ロマンス」と言われるアメリカで広まっているこのジャンルは、レジ横に置かれてスナック感覚で買われていくほどメジャーなものらしい。日本にその翻訳ものも入って来ているが、日本人作家でそれを書いている人もいる。結末が分かっているとつまらないのではなく、結末が分かっているので安心して読めるのである。これはなかなかの納得力。
世に「ロマンス小説」はこう称される。「偉大なるマンネリ小説」と。