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歴史漫画の枷「史実バリア」”キングダム”王騎以外にあいつもこいつも歴史上の実在人物

投稿日:2020年2月4日

「史実バリア」

出典元、歴史を題材とする小説、漫画などの感想において読者が用いる表現。ここでは主に漫画について取り上げる。

歴史物、とひと括りにしたいところだが、現在これもまた掘り尽くされたジャンルであるとも言える。例えば日本では人気のある戦国時代、幕末、中国では三国志の時代など、大勢の作家がたくさんの作品を残しているだろう。そうなると当然、歴史上の同じ人物が登場し、作者の味付けによって様々なキャラクター像を残し、作品を彩る。そしてそこには一つの枷がある。それは例えば、織田信長が登場するならば”本能寺の変まで死なない”という枷である。これを通称、「史実バリア」と呼ぶ。

もちろん、作品として史実に必ずしも準拠しない造りのものも存在する。現代の若者がタイムスリップして、ずっと前に死んだ信長の代わりを演じていたとか、実は織田信長は本能寺の変では死なず、関ヶ原の戦いを遠目に見ていた、などである。それはそれで”この作品はこういう感じで行くのです”という事なら成り立つし、読者としては”そういう作品”と認識し、エンターテイメンとして楽しむ事になるだろう。しかし完全に史実から離れたストーリー展開になってしまうと、それは歴史物では無く「歴史if物」となってしまう。みんなの知っている時代と歴史上の人物を土台にした、作者のオリジナルストーリーである。それを否定する訳では無いが、それは歴史物とは別物であり、「史実バリア」も存在しない。

さて、歴史物を描く作者が公言していなかったとしても、歴史の記録が残っている以上、内容が準拠していればそれは歴史物である。そして長く続く話の中で、明らかに史実に則っている展開が続けば、読者はそこに「史実バリア」の存在を認識する。しかし当然の事ながら、古ければ古いほど史料はロクに残っていない。「誰がどこを攻め落とした」、「誰がいつ死んだ」、ぐらいの情報が断片的に残っているだけだったりする。そういう時代を題材にした漫画が実は、

作者の腕の見せどころなのである。

原泰久の漫画「キングダム」は、紀元前230年頃の物語である。いわゆる春秋戦国時代、三国志よりざっくり二段階ほど前の時代である。が、中国には司馬遷の「史記」があるので、諸説あるものの大まかには記録が残っている。「キングダム」の時代で言えば、「誰がどこを攻め落とした」、「誰がいつ死んだ」の記録があるのである。そして「キングダム」で漫画らしく脚色され登場した人物たちが、案外あいつもこいつも「史記」に名を残す人物だったりしているのである。なので紀元前、日本で言えば卑弥呼よりも昔の時代にも関わらず、”「史実バリア」が結構いろいろな人物に発生している”という面白い状況になっている。

漫画において主人公はまず死なないだろう。それは分かる。しかし周りの登場人物たちも”この戦いでは死なない”と分かっているというのはなかなか大きな枷である。しかしそこを面白く描くのが漫画家の腕とも言える。死なないからと言って苦戦しない訳ではないし、大けがを負わない訳ではない。また逆に記載のない部分は自由度が広い。作中屈指の人気キャラである王騎は、「史記」にはほぼ「何年、王騎死す」の記述しかなかったという。それを作者の原泰久は膨らませ膨らませ、主人公である信の目標となるキャラにまで作り上げた。

現在50巻を迎え、ものすごい盛り上がりを見せている「キングダム」だが、登場人物の生死以外にも「史実バリア」の亜種として「いつ、どこどこを攻め落とした」も大きな見せ場である。現在連載中の戦いは、勝つ戦のはずだが滅茶苦茶苦戦しているし、兵站も尽きかけて「これもうどうするんだよ」状態である。しかし「史記」に勝ち方は載っている。普通そこは予定調和になってしまうところが、面白く描けるのが凄いところであり、とんでもない事でもある。「史記」を見てから「キングダム」を読む人も早々いないと思うが、今のネット時代、たまに情報は入って来てしまう。まず思うのが「こいつ主人公にして大丈夫なのか……」だが、まあそこも含めて、知っていても楽しめるのが「キングダム」の凄さであり、新しさである。まだまだ続く壮大な春秋戦国ロマン「キングダム」、細かい事を気にしないで楽しむのもアリだし、細かい事を気にしながら楽しむのも、またアリである。

-表現

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