「イチオシの味があるくせに他の味もある」
出典元、おーぷん2ちゃんねるスレッド「意識の低いラーメン屋にありがちなこと」より。どこかの誰かの書き込み。
このスレはタイトルの通り、意識の低いラーメン屋あるあるの話題である。「意識高い系」が悪口として使われているのに「意識が低い」も悪口になっているのは困った話だが、分かりやすい用語があっただけで実際は「やる気のない店」とか「雑に営業してる店」とかそういった意味で使われている。挙がっているのは「水がぬるい」、「テーブルが脂ぎっている」、「店主が座ってテレビ見てる」などで、おおむね共感の得られる要素がピックアップされていたと言えるだろう。そしてその中の一つにこれがあった。
「イチオシの味があるくせに他の味もある」
あるある~! イチオシがあるならそれだけで勝負すればいいじゃん――
……と思いそうになるが、よく考えてみるとそれは別に、それほどおかしい事ではない。例えば醤油、味噌、塩の3種類の味がある店で、「イチオシは塩です!」と書いてあってもそんなに違和感は無い。それはつまりラーメンという食べ物が、元々人によって味の好みがかなり異なる食べ物だからだろう。一種類しかない店であっても店自体を選べばいいという話もあるが、複数人で行く場合はとんこつ専門店とかだと店の選択時点で選り好みされてしまう。一つの店で3種類あるのなら入ってから選べるし便利であり、そこにその店イチオシの味があっても納得である。まあ、そこに立ちはだかる気になる要素としては
”イチオシの味だけで勝負したかったけど集客の都合でほかの味も出している感”
だが……。一種類の味で勝負している店ほどこだわりを持っている印象が強く、醤油も味噌も塩もやってるしそれぞれのつけ麺もあるよ、夏には冷やし中華もやるよ、となると途端になんでも屋のイメージになる。それが悪い訳ではないが、ラーメン専門店というより街の中華料理店にどんどん近付いていく。スレでも意識低いラーメン屋のあるあるで「メニューがやたら多い」というのは指摘されていた。メニュー数が多いのは嬉しい話のはずだが、一定数を超えると不安になってくる謎の現象である。壁にメニューびっしりの中華料理店は嬉しいが、ラーメン屋でそれをやられると頭にハテナが浮かぶし選びにくい。「これがイチオシ」とか書いてくれよ……。
たぶんそこには、ラーメンの作りやすさという要素が多分に関わってきているのだろう。悪い意味ではないのだが、ラーメンは煮込んで作るスープの元を作ってしまえばそのスープの流用で醤油、味噌、塩のタレと混ぜるだけでその味になってくれる。つまり数時間掛けて仕込む、あの面倒なスープを味ごとに作る必要がない。最後にちょっと変化を加えるだけで簡単にバリエーションが作れて集客にも繋がるなら、こだわりを捨ててたくさんの味を出す選択肢を選んでしまう店の選択も理解出来る。便利な料理であるところのラーメンさんサイドにも問題があると言えるのである。
しかし一つの味で上手く行っていたとしても必ずしもそれでいい訳でもない。例えば会社の昼休みに行ける唯一のラーメン屋が一種類の味だったりすると、好きな味でも頻繁には通いにくい。どんなに暑い夏でも冷やし中華どころかつけ麺すらやってくれない店でも夏に足は遠のくし、多少の亜種、辛めだったり濃い目だったりを作るのも生存戦略の一つではないか。もちろんそんなものは店の勝手で、イチオシの味だけで上手く行っているなら何の問題もない話だが。