「ととのう」
出典元、サウナ用語より。「サウナトランス」、「サウナハイ」とも。
一部の愛好家は居るもののそこまでメジャーな存在ではない、サウナの話である。あの、熱い部屋に入って我慢比べをするかのごとく限界まで粘って汗をかく遊び。……遊び? 銭湯やジムにでも定期的に通っていなければ遭遇しないし、そもそも一度体験してみて好きになるかならないかでも個人差があるのがサウナである。中でやる事も特にないし……。まあ、そんなに長い時間いられるものでもないが。
初心者に優しい温めのサウナにしか入った事のない人は意識しづらいが、ガチンコのサウナは本当に熱い。入った瞬間に「えっ、これ大丈夫なの?」という気持ちになり、時間経過でどんどんきつくなるという苦行である。また、熱い空気は高所に溜まるため、低い位置はそれほどでもないが高い位置ほど熱くなる。サウナの多くが階段状になっているのはこれのせいで、限界まで熱さを求める人は高所に陣取る。あと単純に熱源の近くは熱い。熱くて限界を迎えてそれでもあと30秒だけ頑張って、逃げる様に出るのがサウナである。
そして、サウナと水風呂はセットになっていて、熱くなった体を水風呂で急冷する。これはもう想像通りキュウゥゥゥ……という話なので心臓の弱い人には危ないし、そうでなくても慣れないと大変な刺激なのだが、逆に慣れるとこれがないと満足出来なくなる。正しくは、休憩を挟みつつサウナで熱して水風呂で冷やしての周回を行うと良いらしく、もちろん温度や体調によるがサウナを8~12分、水風呂に1~2分、休憩8~12分みたいな感じで回すと良いらしい。これを2、3度繰り返すと体がキマる「ととのう」という状態になる。もし漫画だったら見開きで宇宙を背景にキャラクターが全てを悟った様な顔をするべきシーンだろう。外部刺激を利用するとはいえ能動的に血流を速めているのだから、ある意味「ギアセカンド」と言ってもいいかもしれない。ドンッ!
サウナが健康にいいと言われるのにはいくつか理由があるが、その理由は運動している人が健康的なのと似た理由である。体を動かさなくても熱により強制的に体が反応するので、血行が促進され、老廃物が出て新陳代謝が上がり、擬似的に運動をした時の様な効果が見込める、らしい。スポーツをしていない限りあまり味わえない体への限界に近い刺激を、健康的な方法で行えるのだからそりゃあハマる人はハマるだろう。少なくとも風邪は引きにくくなる。
サウナの本場と言われるフィンランドでは、自宅にサウナを併設してあるところが多く、毎日の様に入っているらしい。しかしフィンランドでは水風呂ではなく外気や湖を使ってクールダウンしているらしく、水風呂は使わない。という事は、サウナからの水風呂で「ととのう」を味わうというのは、日本で生まれた独自文化なのかもしれない。……なんだかカレーやラーメンの日本での独自進化に似た匂いを感じるが、まあ水風呂自体は外国も使っているところがあるので、どこが発祥なのかは定かではない。
ともかく非現実的な体験がちょっとその辺で味わえるのだから、一回試してみるのも面白いだろう。初めて体が「ととのう」状態になった人は、こう言うのである。
「ととのいました!」
あれっ!?