「今週の調合」
出典元、ラジオ番組「マリーのアトリエ」より。コーナーの名前。
省略してしまった。番組の正式名称は「池澤春菜のみんなで、た~る ~ラジオ・マリーのアトリエ~」。1997年から1998年にかけてTBSラジオ系列で放送されていたラジオ番組で、ゲーム「マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~」を題材とした番組だった。いわゆる「アニラジ」である。
パーソナリティはそのマリーの声優、池澤春菜とドン・マッコウ。池澤春菜ってどんな名前やねん、という……間違えた、ドン・マッコウってどんな名前やねん、という話だが、普通に日本人である。ラジオに出る時はドン・マッコウの名前を使っているだけで、本名は溝口功さん、何のドンなのかは不明である。ラジオ番組ではたまにある、パーソナリティだけじゃ進行が不安だから初めのうちはプロデューサー的な人に一緒に出てもらって補助してもらおう、とやっていたら二人の掛け合いが馴染んでしまって結局ずっと出ている人、である。
ついでに池澤春菜じゃなくて花澤香菜の間違いじゃ? と思う人もいるかもしれないが、間違えているのではなく普通に別人である。花澤香菜が声優としての知名度を上げてきた頃に池澤春菜は既に人気声優だったので、当時はほぼ逆のリアクションを多数の人が行っていた。似てる様でそこまで似てない様でやはり似ている。まあそれはどうでもいいとして……。
「マリーのアトリエ」はアイテムを調合する錬金術のゲームである。そのゲームを題材にしたラジオを作ったとしたらどうなるか。主人公の声優にパーソナリティをしてもらおう、ラジオドラマを流そう、……な に か を 調 合 し よ う。調合、混ぜる。混ぜると言ったらミキサー、じゃあ変わった食材同士を混ぜて飲んでみよう。一切ひねった考え方をせずにそんなコーナーが爆誕したのである。それがこの「今週の調合」で、しかしそれがとんでもない事になった。
初めはなんとなく思い付いたものを混ぜたり、リスナーの「これとこれを混ぜては?」という案を採用していた。しかしそれは早い段階でランダムと化す。リスナーから送られて来た食材案を放送中にくじ引きしていくつか選ぶ。しかしそうするとあらかじめ用意出来ないので、スタッフはその場でコンビニに走る事になる。そして買ってきた食材をミキサーで混ぜて、飲むのである。これはもはや闇鍋では……? 続いて楽しい楽しい試飲タイムと、リアクション芸の見せどころ、いや聞かせどころである。作られたジュースには名前が付けられた。
いくつか紹介すると、抹茶アイスクリーム、プリン、C.C.レモンを混ぜた「プリまっちゃly」。これは美味しかったらしい。材料を見てある程度予想は付くが、ある程度までとも言える。みかん果汁100%ジュース、トマトジュース、苺の板チョコ、フルーツゼリーを混ぜた「胃液」は名前の通り危険だったらしい。トマトの酸味がつまり、……。おかゆ、あんずゼリー、カラムーチョを混ぜた「ゲロッパ」は、番組スタッフが飲んで涙を流した。こういう悪ふざけにスタッフを巻き込むのはお約束である。美味しいのが出来たら飲んでみたい気持ちと、不味いのが出来たら飲ませてみたい気持ちは同時に存在してしまう。あずきアイス、ヤクルト、夕張メロンジュース、昆布おにぎりを混ぜた「バイヲハザードをおえっ」は、池澤春菜がこのコーナーで唯一飲めなかった。3つ目まではいいが4つ目がどうかしている。こういったノリは、まさにザ・深夜ラジオというものだろう。
しかしまあ……、これをお笑い芸人がやっているのではなく、声優がゲームを真っ当にフィーチャーしてやっていたのだから面白い。もしくはタチが悪い。「今週の調合」、ラジオ番組における伝説のコーナーというものがあるとすれば、その中の一つにこれを入れてもいいだろう。