「前回開いていたページを開く」
出典元、ウェブブラウザ「Google Chrome」の機能の一つ。とはいえほかのブラウザでも同様の機能は見られる。
タブブラウザが普及して幾年月。というかブラウザ自体、あちこちのメーカーから出ていたものが次々と消えて行き、現在は大手3種ぐらいに絞られた状態だろうか。マイナーブラウザが初めて実装した「タブ機能」は、結局主要ブラウザは皆採用し、それが出来るからこれを使う、という目玉にはならなくなった。今現在、パソコンでタブを一つしか開かずにネットサーフィンをしている人は居ないだろう。しかしかつては、主にパソコンへの負荷を考えてブラウザとは単一タブしか開けないものだったのである。
そこまではいい。
主要ブラウザがタブ機能を実装して行っても、ユーザーはそれまでのノリで単一タブを主流に利用していた。たまに2、3個追加でタブを開いても、パソコンの負荷を気にしてそれは一時的にして、見終わったら閉じ、最後はメインページだけを残してブラウザを終了させていた。長年の慣れ親しんだ使い方というのは変わらないものである。しかしパソコン性能の向上、インターネット回線の速度アップにより処理に余裕が出て来る。そうなるとどうなるかと言うと、”片付ける必要がなくなる”のである。いちいち見終わったページを閉じて終わらせる、という処理が必要なくなる。そしてパソコンも使い続けていると、毎日開くページ、むしろ開きっぱなしにしたページがいくつか出来るのである。Gmailなどのウェブメールをメインに使っている人も増えている。そうなるとメールはずっと開いておきたい。そのニーズにピッタリ合致したのがこの機能、
「前回開いていたページを開く」
である。
つまり過去のいちいち開いていちいち閉じる使い方は終わった。しかし複数ページを開きっぱなしにしておいても、ブラウザを閉じればまたいちいち開き直さなければならない。人によってはホームページに複数のページを設定し、毎回起動時に4つも5つも指定のページを開く様にしていただろう。しかしそれは少し、応用が利かない。その需要を見たのか、ウェブブラウザが機能として「前回開いていたページを開く」を実装する。つまりもはや、複数タブ開きっぱなし推奨という事である。
しかしそれが使う人によってはとても使いやすい。どうせいつも開くサイトは開くし、終わる時にも開いている。そしてこれは、今回ちょっと開いたけど途中までしか見てないから明日続きを見たい……、という需要にもピッタリの機能なのである。そのページを見終わったら、閉じてしまえば次回には引きずらない。そしてあっという間に全ての主要ブラウザが採用し、スタンダードになった。こんななんてことない機能で、実装も簡単そうなものだが、ユーザーのネットブラウズ環境に与えた影響は計り知れない。
おそらくこれは、実装した開発者の気持ちの重さと、受け止めたユーザーの気持ちの重さが合っていない。……いや、ユーザーにしてもその機能を何気なくオンにした時の気持ちと、いつの間にかなくてはならなくなっている今の気持ちとでは、熱が違っているのかもしれない。こういうものを「神は細部に宿る」と言うのだろう。
関係ないがせっかくブラウザの話だったので、無駄に懐かしい名前を出して話を終える。
「Netscape Navigator(ネットスケープ・ナビゲーター)」