「想い出はいつもキレイだけど それだけじゃ おなかがすくわ」
出典元、「JUDY AND MARY」の曲「そばかす」より、歌詞の一部。作詞はボーカルのYUKI。
「JUDY AND MARY」の「そばかす」は、アニメ「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」のオープニングテーマとして知られる。１２０万枚を売り上げ、「JUDY AND MARY」最大のヒット曲になった。「るろうの剣心」の曲として漫画、アニメファンにも有名で、また「JUDY AND MARY」の曲としてJ-POPとしても知名度がある。ミリオンヒットしているから当然なのだが。これは曲の内容がアニメアニメしていないため、普通にJ-POPソングとしても聞けるからであるが、しかし問題はここにある。
別にアニメのオープニングテーマを必ずしもアニメ内容に準拠したものにしろとは言わない。しかし子ども向けの元気いっぱいなアニメに、沈んで落ち着いたバラードを当てたりはしないだろう。ハードボイルドで血生臭い世界観のアニメにも、おっぺけぺーでほわほわ～んな曲を当てたりもしない。ここで「るろうに剣心」は時代劇バトル物であるにも関わらず、明るめの失恋ソングを当てはめてしまった。……まあそこまでは非難されるほどではないし、ほかの作品でもそのぐらいの齟齬はある。しかし、よりによって歌詞のサビ部分がこれでは、おいおいっ、となってしまうのである。
「想い出はいつもキレイだけど それだけじゃ おなかがすくわ」
「るろうに剣心」の主人公、緋村剣心（ひむら けんしん）は幕末に維新志士として人斬りをしていた過去があり、その償いのために作中では、人を救う生き方をしている。剣心にとって過去は、思い出したくない過去、後悔の残る過去である。過去の話はしたがらないし、状況に迫られてする時も非常に空気は重くなる。つまりほぼ、触れてはいけない過去なのである。その過去に、「そばかす」はサビで豪快に触れてしまっている。なんでこんな事になってしまったのか。
……。
なんでこんな事になってしまったのか、と歌の歌詞を一部引っ張り出してつっこむ事自体が野暮である。当たり前の話である。では歌詞全体はどういう事になっているのか。……だから失恋ソングである。しかしどうしてここまであさっての方向性な歌がオープニングテーマに選ばれたのか。なぜ「るろうに剣心」のオープニングが「そばかす」なのか、というのはやはり当時の人たちも「なんでやねん」と受け止めていたのである。これは当時のインタビューなどが残っており、調べれば結構すぐに判明する。さてその心は？
要約すると、「JUDY AND MARY」は突然決まったアニメのタイアップに慌てて曲を作る事になった。が、アニメの内容が不明なままのオファーだったため、方向性も見当が付かず、とりあえずアニメと言えば、とメンバー全員がたまたま知っていた「キャンディ・キャンディ」を参考にする事にした……。オープニングは同名の曲「キャンディ・キャンディ」。歌い出し、
「そばかすなんて 気にしないわ」
そこぉ！？
だから「そばかす」なんです、ってナニソレー。しかし本当らしい。そしていい曲が完成したな、と思ったらアニメは「るろうに剣心」だったもんで、こんなちぐはぐな事になってしまったらしい。……酷いエピソードである。しかし曲は曲でとても良く出来ていて、もちろんアニメの相乗効果もあり１２０万枚も売れた。「るろうに剣心」のオープニングテーマ「そばかす」、要素をひっくるめてとても有名である。展開としては非常にシュールと言えるが、おそらく曲の良さが細かい事を気にしなくていいぐらいのものだったので、これだけ残っているのだろう。しかし「そばかす」が歌詞に含まれる曲というのもそんなにたくさんないだろうに……、「キャンディ・キャンディ」を参考にしていたとは。そしてどちらも歴史に残る名曲と来たもんだ。ここまでひっくるめるとこれは、壮大な痛いニュースと言えるかもしれない。
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