「あっち~」
出典元、不詳。夏場などで暑い屋外から、涼しい室内に入った人がたびたび発するセリフ。
暑い屋外から涼しい室内に入った人がたびたび発するセリフ。
いや、そのりくつはおかしい。暑い場所から涼しい場所へ移動したのだから、そこは「涼しい~」なのではないか。実際、体は暑さを感じなくなり、涼さを感じているのだから。が、しかし。もちろんその環境下で「涼しい~」系のセリフを言う人もいるのだが、そこで発せられるセリフは圧倒的に「あっち~」系が多いのだ。これはどういう事だろうか。体感がおかしい? いや、そういう事ではない。
状況を頭に思い浮かべてみよう。猛暑の中、外回りをして会社に着いた男性サラリーマンが、涼しい事務所内に入って来た。中でずっと仕事をしていた人たちが「お疲れさまです」などと声を掛ける。男性サラリーマンは開口一番、「あっち~」、そして返事、「お疲れさまです~」である。そのあとに多少、暑さへの愚痴が続く事もあるだろう。うん、やはりなぜか違和感なくすんなり想定出来る。
ここで同じ人が同様の暑さの中、一人暮らしの自宅に帰って来たパターンを想定してみる。その場合普通エアコンは効いていないが、なにがしかの”かがくのちから”で付いていたと仮定しよう。ガチャ、誰もいないのでただいまは言わない。室内は涼しい。「あ~涼しい」。……おやぁ? これもまた違和感なく自然である。「あっち~」を言うか想定してみる。……いや、言わないな。言うと違和感がある。アピールする相手がいないのだから。……。
そういう事か!
「あっち~」はアピールのセリフだったのである。涼しい事務所に戻って来た、自分は暑い屋外にずっといたのに、涼しく快適な環境で過ごしていた人たちがいる。まず感じるのは涼しさだが、それよりも……、”自分は暑い中頑張っていたという事をアピールしたい”。その想いが「あっち~」なのではないか。だから中にいた人にはねぎらってもらいたいし、もし事務所に誰もいなかった時それは、「あ~涼しい」になるのだろう。
誰もがそうとは言わないが、体感の事実よりも他人への訴えを優先してしまう心情も理解出来る。それぐらい最近の夏は暑い。中にいる環境の人は、少し気にして帰って来た人の発言をチェックしてみると面白いかもしれない。そして実際に、涼しい室内に入って「あっち~」と発する人は思いのほか多いだろう。そんな人にはねぎらいの気持ちを込めて、「なに言ってるんですかどう考えても外より涼しいでしょう」と言ってあげよう。