「取っ手付き真空断熱マグカップ」
出典元、食器の商品名。”この様なもの”はたくさんあるが、一応架空の名称である。
「知らない人は損してるなあと思うこと」という情報ジャンルがあるが、その筆頭に上がって来るものの一つが、真空断熱マグカップである。というか「ケータイマグ」と呼ばれる水筒でもいい。メーカーで言えば主にサーモスが出したタンブラーが先陣を切って発売したと思われるが、他メーカーも追随し、今では食器売り場には必ず置いてある商品となっている。トップバリュー的なものまで参入し、性能差がどのくらいあるかは不明なものの、とにかく一大ジャンルを築いている。これまでの商品となにが違うのか。
そう、「ダブルウォール」という呼び名もあるが、マグカップなり水筒の外壁を二重にして造り、その間を真空にする事で、圧倒的な断熱効果を発揮するのである。つまり、熱い飲み物を注いでそのままカップを掴んでも熱くない。全く熱くない。キンッキンに冷えた飲み物を注いでも同様、掴んでも全く冷たくない。これらの商品が登場する前の時代の人に教えたらビックリするだろう。と同時に、ここまで有名になっている商品とはいえ、現在も知らない人はたくさんいる。つまり「知らない人は損してるなあと思うこと」という訳である。利点はまだある。
まず冷たい方、通常なら冷たい飲み物をガラスのコップに入れ、しばらくすると外気温との差で水滴が付く。それを掴めば手も濡れるし、増えて来れば下にも溜まってテーブルを伝ってしまうだろう。夏場によく目にする、仕方のない光景である。しかし当然ながら、真空断熱マグを使えば仕方なくなくなる。なにせ熱が壁を越えないのだから、水滴が付かないのである。この辺りは性能差が少しシビアなところであり、金属製のしっかりした真空断熱の物なら本当に全く水滴は付かないが、プラスチック製のものだとそれなりに負けて水滴が付いたりする。カップの大きさもあり、用途を分けて使われる物だろう。
そしてもう一つ、保温効果。これが凄い。コップに入れた飲み物が冷めるのは当たり前の事だろう、そう思っていた人々の裏をかく、つまり熱い物でも冷たい物でも、開けた上部は開けていても、壁が真空断熱してくれれば早々冷めないのである。初めて使った人はやはりビックリするぐらいの保温効果である。大げさな例で言うと、冷たいビールの入った真空断熱のコップを、真夏の砂浜に突き刺しておいても、10分や20分ではまだ冷たいままだったりする。「横からそんなに熱が漏れていたのか!」、という衝撃の事実である。これが周囲を完全封鎖される水筒、ケータイマグになるとさらに威力を発揮し、一日ぐらいは余裕であっつあつ、ひっえひえを維持出来る。今現在、朝作った味噌汁を熱々のまま昼の弁当に持参する人もいるし、氷を入れた飲み物を一日中キンッキンに冷えた状態で飲める様、持ち歩く人も多いだろう。つまり一昔前の、ペットボトルに凍らせたポカリを作ってそれをタオルでくるみ、カバンの中が濡れない様にさらにビニール袋に入れたりするなどの苦労が一切不要になる、新時代の商品である。知らないでペットボトルで頑張っている人は、損をしていると言わざるを得ない。
で。
特に日常的に使うマグカップは便利さもあるし使用頻度も高くなるだろう。冬場は熱い飲み物がなかなか冷めないし、夏場も冷たい飲み物がなかなか温くならない。購入時にはメーカーもあるが、サイズや形状で飲む場面を想定して購入商品の選択肢を狭めて行くだろう。熱い飲み物がなかなか冷めないのは猫舌の人にはちょっとしたデメリットだが、カップを掴んでも熱くないのは”猫手”の人にはなかなかのメリットである。さすが真空断熱、さすがダブルウォール、……。
”取っ手付き”とは。
掴んでも大丈夫な様に作ってあるのに、そこに取っ手を付けた商品もある。なんだこの違和感は……。ん? それなら真空断熱の意味がなくないか。……いやそんな事もないか。冷めにくい、水滴が付かない、その利点はそのままである。が、やはり違和感がある。”取っ手を付けるなら真空断熱じゃなくてもいいじゃないか”という気がする。いや、だから、今書いた様にそんな事もないのだが、なんだろう。サーモス登場初期は取っ手付きなんてなかった様な気がする。直接掴める利点を強調していたのだろうか。競合他社が参入しまくってきて、取っ手付きなり、蓋付きなりのバリエーション勝負になって来たのだろうか。どうしてもこの、真空断熱マグカップなのに取っ手付き、というものに納得が行かない。
根拠のない難癖かな? 難癖かもしれない。ゴメンナサイ。