「ワンマンバス」
出典元、その辺を走っているバスの名前。この話題が全国的に通用するのかは不明。
なにか特殊な意味合いを持っていると見せかけてそのままの意味、というタイプのネーミングである。つまり一人の、男が、運行するバスである。実際には運転手は女性もいるがそこは気にしないでいい。そして「ワンマン」と聞いた時のとりあえずの第一印象は、「ワンマン社長」、「ワンマン経営」から来るものではないだろうか。それも良い意味ではない。トップがいい様に会社を振り回し、権力を持っているからなんでもかんでも好き勝手やってしまう。それが大きく利益に結び付いたり、社員のやる気向上に繋がればいいのだが、悪い意味が染み付いているのは、そうでない場合が多いからだろう。その社長に振り回される社員たちは大変な苦労を味わう事になる。……という「ワンマン社長」や「ワンマン経営」のイメージのまま「ワンマンバス」を想定すると恐ろしいことになる。が、先にも書いた通り「ワンマンバス」はただ単に一人で運行管理するバスするというだけなので、横暴でもないし暴走もしない。
古くは今の規模のバスにも運転手とは別に車掌さんが同乗していて、支払いや安全確認など運転手と分業で行っていた事から、一人になって「ワンマンバス」という名称が生まれたらしい。実際に「ワンマンバス」に乗ってみると、支払いから安全確認、アナウンス、雨の日には傘を売ったりなど、確かに一人の手に余るぐらいの総合過ぎる作業を「ワンマン」でやっているのに驚かされる。一番大変だろうなと思うのは車椅子の乗客対応だが、それは置いといて、満員に近い時に詰めてくれない乗客の対応や、降りる人がちゃんと降りたかの判断、最近では「止まってから席をお立ちください」のアナウンスを考えるとシルバー世代の転倒事故の多さなど、とても大変なのだろう。それがなんとか一人で可能になったのは、おそらく料金支払い機のハイテク化と利用者のマナー向上が大きいと思われるが、実際のところは知らない。
ただし大変さにも多少、裏はあり、公共交通機関なので通勤通学の時間帯は当然混む替わりに、それ以外の時間帯はガラガラの場合が多いという点がある。バスは高齢者が無料だったり、格安定期があったりするのでそれなりに日中もシルバー世代の客はいるのだが、それでも通勤通学時間帯の比ではないだろう。なので経路、運行時間は同じでありつつも、客が少ない時間の気楽さというものはあるはずで、心労的な忙しさに波のある職業と言えるだろう。確かに乗客がほとんどいないヒマな時間帯に、運転手と車掌がいたとしても車掌は手を持て余す。ワンマンで十分だろう。
しかしバスの事故の少なさにも恐れ入るものがあり、実際の事故までいかずともちょっとしたミスも通常の車やあの運転の難しい図体を考えるともの凄く少ない。ひとえに運転手の熟練の成せる技だが、かなりの訓練を経て、その域にまで達したのだろう。まあ、毎日同じ道を走っているからという説もあるが、それにしたって相当なものである。あとはモンスターが乗ってきた時に大変な可能性があるが、その可能性が低い日本だからこそ、あれだけ丁寧なサービスを一人で行えているのだろう。敬意を込めて「ワンスーパーマンバス」と呼ぶのも、やぶさかではない。