「人は達成できなかった事柄や中断している事柄のほうを、達成できた事柄よりもよく覚えているという現象」
出典元、ウィキペディアのページ「ツァイガルニク効果」より。心理学的な、なにか。
「ツァイガルニク効果」はリトアニア出身の心理学者、ブリューマ・ゼイガルニクが提唱した現象らしい。ゼイガルニクなのにツァイガルニク効果。なにやら小難しい話をしているが、これを応用した手法が今現在、世の中に溢れているという話である。「達成」という言葉が使われているが、「気になる」にして考えてみると分かりやすい。
テレビで使われる、いわゆる「答えはCMのあと!」がまさにこの「ツァイガルニク効果」を利用していると言われている。つまり「引き」である。一つの話が終わり、きりのいいタイミングでCMに入る……のではなく、あとちょっとこれを見せてくれたらいいのに、というタイミングでCMに入る。それはクイズ番組の答えの時もあるし、バラエティで珍しいものを見せる直前の時もある。ストレートにそれを見せられるよりも、見せる直前に盛り上げて、さらに時間を空けられると、その興味の度合いは跳ね上がるのである。
そういったものはネットにもあり、困った事に「ツァイガルニク効果」を利用したテクニックが氾濫している。一番多く使われているのは記事のタイトルだろう。まとめサイトなどにたくさんのブログ記事のリンクが貼られる事があるが、見えるのはタイトルのみである。そこでいかにクリックしてもらえるタイトルにするかがしのぎを削られており、やはり「引き」の技術が使われているのである。「こんな事があった」というタイトルは、内容は記事を読まないと分からないし、「こんな凄いものがある」というタイトルも、記事を読まないと分からない。
まあ、そんなメディアの話にしなくても「ツァイガルニク効果」は日常で使われていて、ちょっと話が面白い友人などは、ただの”こないだあった話”をやたらと引きを強く話してくれて、それだけで面白かったりする。オチまでの経緯の話がやたらと長いエピソードだと相づちオンリーの時間が長くなってしまうのが悩みの種だが、面白ければそれでいいという話でもある。なお、面白くない場合の一方的な長話は全くよろしくない。
誰かが意識して仕掛けている心理テクニックを、自分が意識せず食らっているというのはちょっと嫌な話で、食らう状況が変えられない以上、せめてその存在を知っておくと心が強く保たれる。こういったCMや釣りタイトル、話術に使われている「ツァイガルニク効果」も、知っていればまあ、上手く使ってるなと思って一歩引いたところから受け止められるだろう。分からないで食らうより、せめて分かった上で食らう精神である。名前も覚えにくいし「ツァイガルニク効果」ももう、「ツヅキィキニナァル効果」でいいよ。