「多くの人が意図的に無視していると思われることだが、地球は太陽の周りを凄まじい速さで公転している。ということは仮に一時間前に過去に戻ってもその空間は宇宙空間であるが、これを言うと、話が即終わるためか、ほとんどの人がこのことについて言及しない」
出典元、ウィキペディア「タイムトラベル」の項目より。
”なんだか煽り口調”ということで少々話題になった一文である。「一時間前に過去に戻っても」は「一時間前の過去に戻っても」の誤字と思われる。ページ自体はタイムトラベルについて、創作においての使われ方やバリエーション、発生しうる問題について全体的にロマンを語りつつ、現実での実現の可能性についても少し触れている程度なのだが、この一文だけ明らかに異彩を放っている。しかしまっこと的を射る指摘でもある。
分かり切っている事だが地球は太陽の周りを公転しているのである。時速10万キロ以上だそうで、もの凄いスピードである。一時間後には10万キロ先に移動している訳で、タイムトラベルをどのくらいするにしろ、位置情報もしっかりしていないと宇宙空間に放り出されてしまう。しかも太陽系自体も銀河を中心に凄まじいスピードで回転しているらしく、えーとそうなると相対的に……、と思ったら宇宙全体もビックバンでとてつもないスピードで膨張していたんだった。え、最近、膨張じゃなく縮んでいる説が出て来ているって? ……こうなって来ると、正確な座標はNASAにだって分からない。
そうなるとつまり、それ全部の正確な真実が分かった上で計算に入れてタイムトラベルしてんのか未来人は、という話になる。時空の仕組みを解いてタイムマシーンを作った、までは分かるが、じゃあ宇宙の仕組みも判明してるって事ですよね? という話である。本当に全部? ああ、若干ギレ気味であっても、仕方ないかな、と思わざるを得ない。確かにこれは、”話が即終わる”。しかしまあ、ロマンじゃねぇじゃねぇか。
ちなみに煽り口調だったせいか話を即終わらせないためかどうか、現在ウィキペディアのページからこの一文は削除されている。このページを見に来る人はそういう話を聞きたいんじゃない、という話かもしれないが、消すほどの事はなかったかもしれない。素人目にも鋭い指摘だとは思うのだから。……だったら自分で書けば? ウィキペディアなんだし、という話でもあるが。
遠い宇宙空間で、タイムトラベルに失敗したタイムマシンが見つかったら、ロマンだね。