「漫画漫画」
出典元、不明。意味、漫画を題材とした漫画、いや、漫画家を題材とした漫画の事。
「多過ぎる」。要約するとそうなってしまうのだが、言いたい事がそれなので一応問題は無い。
小説などもそうだが創作活動において、取材や資料集めというものが発生する。医療現場の漫画を描きたければ医療現場への取材が必要だろうし、戦国時代を題材とした漫画を描きたければ戦国時代の資料を集める必要があるだろう。それは当然必要となる作業だし、場合によっては出版社が取材費用を出してくれたり、編集者が駆け回って資料を集めてくれたりするだろう。それは当然かつ必要な努力であるが、しかしほかの業種から見てしまえばそれは、「そんなの当たり前じゃん」な努力とも言える。最近はネットがあるので資料集めのかなりの部分が楽になっているだろう事は素人目にも分かる。
にも関わらず、漫画家を題材とした漫画が妙に多いのはいかがなものか。
「バクマン。」の様に、徹底的に掘り下げて、歴戦のヒットメーカーがこれまでの経験を総動員し、業界の裏側をギリギリまで見せて、かつ波乱の物語を魅せる漫画は単純に素晴らしい。そもそもジャンプで連載されていた「バクマン。」は、人気がなければ簡単に打ち切られる環境の中、大ヒットさせた「漫画漫画」の大成功例である。しかし……、その追随ではないとしても、「漫画漫画」自体の数がやたらと多いのである。マイナー雑誌などに特に。なにが不満なのかと言うと、
「漫画を描く環境の事なら既に知っているから調べなくても描ける」という思惑が読者に透けて見えてしまう事である。
また「漫画漫画」か……、と思う漫画読みも多いと思うが、別に漫画家を主題としていなくても、メインの登場人物に漫画家がいたりするとやはり普通に作業場が出て来る。そうなって来ると結局その漫画を描く漫画家は「いつもの」場所を参考にちょっとアレンジして描けばいい訳で、つまり楽ちんである。締め切りに追われたり、アシスタントとのやり取りがあったり、編集者が原稿を取りに来たりと、実際にその漫画家が日常的に行っている事を”漫画化”すればいいだけなので、取材もへったくれもない。しまいには「主題とは関係ないけど主人公が漫画家」だったり、「漫画家の話だけども半分ぐらいは別の話」だったりと、やはり微妙に手抜きを感じてしまう作品も多い。「漫画漫画」な時点でダメという事は決してないのだが……、そういう印象を持っている読者がいるという事を、漫画家と編集者は知っておいた方がいい事は確かである。
なにに近いかと言われるとファンタジーを舞台にしたライトノベルに似ている。取り組みの考え方が。つまり世界観からして自分で創作出来るファンタジーは取材も資料も必要ない。さらに言えばRPGの影響で「中世ヨーロッパ風世界観」というものがゲーム世代の日本人に浸透しており、描写に悩む事もなくざっくりとした説明で読者に伝わってくれる。最近の流行は異世界転生ものだが、結局到着する場所は同じ様なものなので、考え方としては同じである。まあライトノベルも、「漫画漫画」も、結局面白ければいいのだが……、
面白けりゃいいけどさ、まず「楽したい」が先に来るぐらいならもう、原作者を付けてストーリーは丸投げしちゃえばいいじゃん!
……と思ってしまうのは、うがち過ぎの考えだろうか。