「高校生男子(ヤングアニマル)」
出典元、羽海野チカの漫画「3月のライオン」Chapter.88、美咲おばさまのセリフより。
ライトノベル業界では昔から使われまくっているいわゆる「漢字にカタカナ名」のルビ文字だが、最近では漫画でもよく見掛ける様になっている。まあ、最近気になって来たな、と思うだけでこちらも昔から使われているのかもしれないが。多用というより、上手くインパクトを出し、作品の世界観とマッチさせる手法が目立って来ているというところか。「漢字にカタカナ名」ではなく、「同じ意味でまったく違う言葉」という使い方も散見される。有名どころでは「テラフォーマーズ」での使い方が、人気漫画的な意味でも知名度が高いかもしれない。あれは煽り文まで漢字にルビてんこもりで、それがちょっと強引なのに、格好良く決まっているのだから始末が悪い。ルビというのは一つのフレーズで二つの読みをしている訳なので、アニメ化の際にどっちを使うのかに支障が出るのだが、漫画上の演出としては面白いのでアニメで困った時は困った時である。
「3月のライオン」に関しては特に特殊ルビを多用する漫画ではないが、それであるからこそ、このセリフのインパクトが際立つ。「男子高校生」と書いて「ヤングアニマル」である。中3と高2の男女を二人っきりで家に置いて来ている状況に驚いた美咲おばさまのセリフだ。
「ねぇ ちょっとお父さん 大丈夫なの? いくらいい子で勉強教えてくれるからって
女だけの家に高校生男子(ヤングアニマル)をこうも しょっちゅう出入りさせるなんて!!」
確かにそのシチュエーションは外野から見ればまずいと思うだろう。が、それに加えてのメタ要素である。この作品はベルセルクでおなじみの漫画雑誌「ヤングアニマル」で連載されているのである。これは、もう上手い×上手いの状態である。ニヤリとする人続出の名ルビと言えるだろう。「ヤングアニマル」誌上でのみ威力が増幅する反則的神技である。
なお、この美咲おばさまが心配するシチュエーションに関しては、その後主人公の桐山零が川本ひなたに対して”いきなりプロポーズする”という超展開になり、やっぱ危なかったんじゃないかという空気が出掛かっていた。しかしそれはそれで、プロポーズされた川本ひなたの方も”あれは演技だったんだよね”と受け止めてしまう超発想で、事なきを得たんだか得なかったんだかのいい感じにすぐにメインストーリーに影響しない着地を見た。なにせ川本ひなたもちょっとまだ……、あ、これも美咲おばさまのセリフだった。
「そうね あの子 ちょっと高校生にしては中身が アレだから(小学生風味)…」
「アレだから」と書いて「小学生風味」と読む。
う~ん、秀逸である。