「喜んで!」
出典元、居酒屋の店員がよく使う返事。接客スキルを問われる強制フレーズ。
もちろんその店員が勝手に決めてそう言っているのではない。通常、客から呼ばれた時の返答は「はい、ただいま~」や「お伺いします」、「少々お待ちください」などだろう。そこへどこかのチェーン店が独自色を出すべく導入したのがこの、「喜んで!」である。客に呼ばれたら「喜んで!」と駆け付ける。注文でも催促でもお勘定でも、とにかく”喜んで”駆け付けなければならない。しかしまあ威勢のいい掛け声というものは聞いていて気持ちのいいものである。やる気が伝わって来るし、注文にテキパキ対応してくれればセリフ効果もあり「注文を喜んでくれてるんだな」という気持ちで嬉しくならない事もない。酒の席は多少ハイテンションな空気にしてもらった方が楽しい、というのもある。うるさ過ぎなければ。
問題はこれが、店員が店から指示されている強制フレーズだという点である。もちろん仕事である以上、店員にはしっかりと「喜んで!」を使って欲しいのだが、店員もまた人間である。イライラしている時や、なにかで落ち込んでいる時でも仕事に入らなければならない事もあるだろう。そういった時にもしかし、「喜んで!」は強制フレーズな訳で、使わなければならない。「すいませ~ん」、「喜んでー……」。明らかに疲れ切った声で返事をされる。内容が「喜んで」なだけにギャップが大きい。逆にイライラしている時に投げやり気味に「喜んでーィ、ェイ!!」と大音量で反応されてもこちらもビックリしてしまう。問題はもちろん強制だからである。気持ち良く返せない気分の時は省略してもいいのよ……。と客が言っても意味がないし、店側は決してそんな事を言ってくれないので悲しい状態である。しかし申し訳程度にボソッと「かしこまりました~……、喜んで……」と聞かされる客の事も考えた方がいい。方向性は間違っていないと思うが、強制性は間違っている。
この独自フレーズを打ち出した居酒屋は、良い手ごたえを得たのか同系列の店でも導入したらしい。元気いっぱいの店員が、本当に喜んで返事してくれるのは気持ちの良いものであるが、それを前提とした掛け声である事は理解しておいた方がいい。「すいませーん」、「喜んで!」。少なくとも日本語としてはおかしいやり取りなのだから。まあしかし上手く行っているところがあるのも事実である。いろいろと個性を出せばいいんじゃないの、とも思うのだが、たまーに個性の出し過ぎで事故ってる様な店もある。「すいませーん」、
「しばらくお待ちください、ぽんぽこぽ~ん」
……ふざけてんの?