「おしえて!!Macromedia FLASH MX」
出典元、本の名前。まつむらまきお、たなかまりによる「FLASH MX」の解説本。
「FLASH MX」とは「FLASH」のバージョンである。「FLASH」とは動画の規格である。本のジャンルとしては、プログラム言語の学習書に近い。
「FLASH」。今や一部の人たちの心をブルーにしてしまう単語だが、申し訳ない。まずこの本、2002年発行である。2400円。フルカラーで、漫画風の解説を取り入れた作風がとても分かりやすく、評価が高かった。このジャンルの初心者向け解説書としてはかなり頑張った方であり、これを投げてしまうようでは他の本では学べないだろうと思えるぐらい丁寧に解説されている。どうしても技術者が書く文章というものは初心者目線ではなく、当たり前のように説明なく専門用語を連ねてしまい、読者が離れてしまう。それを補うべく、解説の解説を多く入れ、絵を入れ、画面もカラーで載せ、とても分かりやすかった。解説書というものはたくさん出ればいいというものではない。分かりやすいものが少量あればいい。
……しかしもうどうでもいいのである。
「Macromedia」って! と思った人もいるだろうが、「FLASH」は当初「Macromedia社」で開発され、一世を風靡した。特に動画サイトなどがない時代には、面白動画といえばFLASHアニメーションだった。そしてその後、目を付けた「Adobe社」に買収され、「Adobe社」のものとなった。「Adobe Flash Playerの更新」と聞けば、よくやってたなぁ、と思い出深い人もいるだろう。そして「iPhone」の普及である。「FLASH」は「iPhone」では動かない仕様となってしまった。動画サイトも普及し、「HTML5」による動画組み込みも容易になった。いらなくなった訳ではないが、時代の方向性とズレが生じてしまった。そして「Adobe社」は、2020年末に「FLASH」の開発と配布を終了する予定であると発表した。一つの時代が終わったのである。
諸行無常である。「COBOL」もまだどこかで必要とされているのに、あれだけ一斉を風靡した「FLASH」が正式に終了してしまうとは。買収された「Macromedia」の想いも複雑だろう。まあ、技術がすぐなくなったり、いきなり動かなくなったりする訳ではない。しかし次第に廃れて行く事は確実である。「FLASH」は動画だけでなく簡単なゲームも作れた。何か、どこかで、誰かが、別の形式で保存しておいて欲しいものである。完全に消え去ってしまうには惜しい作品が、たくさんあった。
開発者もそうだが、解説本を頑張って分かりやすく作った人たちにとっても寂しい話である。少なくとも開発技術は意味のないものになる。なので少し、哀悼の意を込めて紹介してみた。確か「FLASH5」の次が「FLASH MX」だったはず。「FLASH」内におけるプログラミング言語「ActionScript」もこの頃の発祥だ。合掌。