「アァアアア年号がァ!! 年号が変わっている!!」
出典元、アニメ「鬼滅の刃」第4話より、手鬼(ておに)のセリフ。cv子安武人。
アニメ「鬼滅の刃」第4話にて放たれたセリフである。手鬼は人間によって藤襲山という山に閉じ込められていた鬼で、主人公の竈門炭治郎(かまど たんじろう)が鬼殺隊入隊の最終選別で相対した。「今は明治何年だ」という手鬼の問いに「今は大正時代だ」と炭治郎が答え、その答えに発狂して叫び出したのがこのセリフである。”長く閉じ込められている”という事への怒りを、鬼という化け物として、かつ、変な性格の奴として発散したものだったが、結果が年号をピックアップした絶叫なのだからとんでもない。作者のセンスはまさしく”ピカピカ”である。
そしてこれがアニメ化でのイリュージョンへと繋がる。アニメ「鬼滅の刃」第4話は2019年4月27日に放送され、作中でこのセリフが放たれた。日本の年号であるところの「平成」が「令和」に変わったのが2019年5月1日。どう考えてもこのタイミングを狙って作られている。5月1日ドンピシャは無理だったのだろうが、アニメの放送時期というものはテレビ局との色々な兼ね合いによって決められている。にも関わらず年号が変わる4日前という至近距離にこれを持って来たのは神技と言っていいだろう。そして、このセリフは作中において特に重要という訳ではない、なんでもないやり取りだというのもまた素晴らしい。そう、素晴らしい。
原作漫画通りのセリフだが、連載時には年号が変わる話はまだ出ていなかったので全くの偶然である。たまたまアニメ化のタイミングが近く、物語序盤のエピソードという事でアニメの制作スタッフが狙いに行ったのだろう。「鬼滅の刃」のアニメは”アニメ化成功による爆発的ブームの発生”として語り継がれて行くだろうが、こんな些細なところまで歴史的エピソードと肩を組んでしまっているのが凄い。こういうのを”持っている”と表現するのだろうか。「世紀の~」という表現があるが、世紀の一発ギャグならぬ、「年号の一発ギャグ」と言えるだろう。……う~ん、伝わりにくい。
大正時代とは言われているが正確な年が明かされていない「鬼滅の刃」の年は、この手鬼のセリフからある程度割り出されている。物語序盤に2年ほど修行期間があるため、冒頭とは年が違うが、この最終選別時点で1914年から1917年の間という事になるらしい。……。刀で戦っているから忘れがちだが、「大正」は結構近代で、1914年とか第一次世界大戦の始まった年だし、銃だって大砲だってある。もっとそういう重火器が使えなかったものか、という考えになりがちだが、再生能力を持つ鬼という存在に大きな効果は出しにくく、日輪刀という特効武器での戦いになったのだろう。この問答は、そう、「東京喰種」で既に通った道である。